第5話

我にかえり、机の上に置いていた物を片付ける。


「じゃあ、終わろうか。今日宿題出すから期限守るように。」


何の感情もこもっていない言葉が静かな教室に響いた。


だが、その言葉はただの雑音として消えていった。


きっと生徒たちには届いていないだろう。


「起立ー!気をつけ、礼!」


「ありがとうございました!!」


その言葉を合図に、一斉に騒ぎ始める生徒たち。


さっきまで静かだったのが嘘のようだ。


そして、ドアへ向かう先生を見てみると、疲れた顔をしながらため息をついている。


顔は真っ直ぐドアの方を向いていたが、目だけが生徒たちを見ていた。


あの先生、いつもため息ついているよな。


きっとあの先生も、自分の授業がつまらないことがわかっているのだろう。


授業終わりにため息をついているくらいだもんな。


まぁ、オレも人のことは言えないが。


だが。


わかっているなら、なぜ自分を変えて工夫した授業をしようと思わないのか。


オレにはそれが全く理解が出来ない。


いや、思っていたとしても変えられないのか?


やっぱり、命懸けで何かをしないと変われないんだろうな。




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