第7話 幸せな日常
黒龍と天理は映画館に着いた、バレるものはバレると見たのかそれとも適当に選んだのか天理が選んだのは。
「推理系の映画だ…」
「ほう、推理系か、俺には興味はねぇが犯人がわかるのか聞かせてもらおうか」
そして映画中、天理は黒龍に何かを話す、黒龍も天理に何かを話す。
映画が終わった。
「天理、お前の勝ちだ、確かにお前の言った通り犯人はあいつだったな、アリバイも全て当てたか」
「黒龍は簡単に誘導に引っ掛かったな、あれは犯人をそう思わせる誘導だ」
「推理が得意か、まずはお前の本性が一つ分かった、だがまだだ、お前の本性をいずれ暴いてやる」
「それは楽しみだ、推理も解けないお前にな」
馬鹿にされていつもならキレる黒龍だがどうにもそんな気分にはならなかった。それから天理は黒龍と別れ、家に帰った。
「ただいま…」
「おかえり、もう夜よ、夕食できてるわよ」
「ん…」
夕食と風呂を済ませ自室に、寝ようと思ったが興味深いテレビがやっていた。推理系だ。
もし、こんなルールでゲームが開催されたら。本性を暴くゲーム。
朱音はとあるテレビに驚きを隠せないでいた、それは以前光が言っていた内容とほぼ同一なルールだったのだから、メンバーは威圧的、忠誠心が高い、優しい、天才的、独裁的、生き残るのは誰だ。全滅という選択肢もあった。優しい光が生き残ったのは知っているが知らない前提で投票してみる。やはり暴力で支配できる威圧的か独裁的じゃないだろうか、朱音は威圧的に投票した。
同様にさくらもその番組を見ていた、さくらは馬鹿だ、難しいことは分からない、
しかし天理という師がいる忠誠心の高い人物なら誰かに付いて数で圧倒できる、そのあとに最後の君主を打ち滅ぼせば忠誠心の高い人物が勝てるのではないだろうか。天理の言葉、どんな人間であっても欲に逆らうことはできない、自分が勝つためならなんだって踏み台にする。さくらは忠誠心が高いに投票した。
明智も同じく番組を視聴、なかなか興味深いテーマだ。天理の言葉を思い出す。時には人間は助け合う必要が出てくる、その中でも一番重要なのは能力でも強さでもなく人間関係、信用性だ、その言葉を思い出す明智、天理ならこの答えを選ぶと。明智は優しいに投票した。
実際にそのゲームに参加していた未来、一位を取った張本人、しかし、知らないものとして考える。そうすると未来には答えの選択肢は一つしかなかった。未来は天才的に投票した。
同じくゲームに参加していたアリス、小さなテレビを前に答えは知っているもののやはり自分を貫き通す。アリスは独裁的に投票した。
未来や光に話を聞かされて本当に番組としてやっている。これはもうそのゲームがあったことを信じざるを得ない。黒龍はゲームの結果を関係なしに考えてみる。まず威圧的、独裁的がいる時点で戦争が起こるだろう。このゲームに救いようはないと思った。黒龍は全滅に投票した。
寝る時間を過ぎてしまったが面白い推理ができるゲームもあるのだと知った、天理は考えていた。このゲームで忠誠心が高い人間が勝つにはフリすぎる。その人物が誰に付くかで変わってくる。独裁的、威圧的、天才的の誰かだろう、しかしそのうちの二人は潰れることになる。全滅という選択肢はない、優しい人間がいるためだ。どんな人間にも人間不信が生じるゲーム。だからこそこのゲームに絶対的答えはない。だからこそ消去法で考える。このゲームの鍵は天才的な人間と忠誠心の高い人間、この二人がどう動くかで変わってくる。しかし、この情報が正しいとすればこの二人すら掌握する人間がこの中にいる。だからこそその人間。天理は優しいに投票するのである。
翌日、天理にとって最高の至福の日。
「行ってくる…」
「行ってらっしゃい」
「ん…」
チェス同好会である、着くとさくらだけではなく明智の姿もあった。昨日の番組の話をしていたようだ。明智はもう受験勉強よりも大切な後輩たちとの時間を少しでも増やしたいと昨日の出来事で思ったのだろうか。
「香ちゃんはー?私は忠誠心に入れたよー天理ちゃんもそこに入れてるって、見てなさそうだけど」
「さくら君は忠誠心に入れたのかい、私的に一番可能性が低いと思ったけどね、私は優しいに投票したよ」
他のチェス同好会のメンバーもその話で盛り上がっているらしく天才的に入れた人が多かった。
「おはよう…昨日のゲームの話…?」
「天理ちゃんも見てたの?どこ入れたの?」
「確かに、天理君の答えは気になるね、さくら君は忠誠心に、私は優しいに投票したよ」
「結論から言えばあのゲームに明確な答えはない…全部正解とも言えれば全部外れともいえる…それがどんな人間かによって変わってくる、天才的以外にも弱気な部分があったり強気だったりそれだけで答えは変動する…他にも二つ本性があったようだが一番可能性が低いのは全滅と忠誠心だろう」
「えー、天理ちゃんの言葉参考にしたのにー」
「忠誠心が高い人間が一位になる可能性が0とは言っていない…他の本性もわかれば大きく変動する、一つだけ見せられても答えの余地がない…1+〇5=、という不確定要素の問題を出されている…だからこそ知りえた情報の中で分析し、投票する必要があったが確定ではないし本性が全員二つわかっていない以上自信はない…」
「それで天理ちゃんはどこに入れたの?」
「私は明智と同じ優しいだ、もし仮にそんな人間がいるのならこの環境も平和になるだろう、間違いなくこの中学校にはいないようだが…」
「ふむ、天理君と同じ回答だったのは嬉しいものだね」
「なんか私だけ仲間外れにされてる気がするんだけどー」
「もちろん私が優しいに入れたからそれが正解とは限らない、情報が不足しすぎている…何せ自分でも本性がわからないというのだから優しい人間でも答えを教えようがない、ルールに自分の本性は分かっている前提なら天才的だっただろう…それにしてもこんなゲームを作った人間に会ってみたいものだ、きっと仲良くできるだろう」
「アリスちゃん、最近の学校はどう?」
私、未来は今日はアリスちゃんと出かけていた、部活はおやすみだ。
「天理」
「天理ちゃん?昨日話した子かな?」
「そうだよ、彼女のおかげでまたしても僕の計画は阻害された、光、天理、そして未来、君たちは本当に邪魔だよ、いい意味でね」
「天理ちゃんとアリスちゃんなら仲良くできるよ、ずっとね、私は離れたところで応援しかできないけどね」
「その応援も今では大きな励みになる、未来と思い出作りをし、死ぬつもりにシフトチェンジしていたが今では死ぬ気すら薄れつつあるよ、僕は何を考えていたんだろうね」
「そうだよ、死ななくていいんだよ、死ななければいつか必ずいいことが待ってるから、悪いことも待ってるけど乗り越えれば必ずいいことが待ってるよ」
アリスは少しずつ、少しずつではあるが心を開いていくのである。
「ひるごはーん」
ムードメーカーさくらが声を上げる。チェスでは負け続けているが特に気にしていない、さくらは勝ったから楽しい、負けたからつまらないという人間ではない。いつでもポジティブ、それが大道寺さくらという人間だ。男子生徒から何人かから告白されたこともあるが彼氏はいない。さくらは常に自由を好む、しかし友達思いだ。特に明智、天理に対しては従順といってもいいかもしれない。さくらはこのチェス同好会に巡り合えたことを誇りに思う。
さくらは昔、テストの点数が悪くて馬鹿にされていた、その時現れたのが赤い少女、彼女はその時その人物の名前を知らない。
「そんなバカの味方するの?」
「馬鹿か…確かに点数を見れば馬鹿なのかもしれない…でもお前たちはその馬鹿にすらなれない…馬鹿を個性とすら見ていない…お前たちは天才崇拝者か?馬鹿と言われるほどの持ち合わせている性質を持っているこいつは私にとっては羨ましい」
この少女は馬鹿を良い悪いで判断していない、一つの人間が持つ個性、性質として判断している。
「あ、あなたは?」
「天野天理だ」
その人物はさくらに手を差し伸べた。
明智香は2年生のテニス部部長候補、運動神経抜群。しかし、頭はよくない。なにか頭を活性化できる場所はないだろうか、そこで見つけたのがチェス同好会、入場料は無料で初心者でも大歓迎とのこと、たくさんの人が集まる中、二人組の小学生に目が言った。一人は赤い服装をしていてとにかく目立つ、もう一人はあまりチェスが上手そうではない、しかし運動神経はよさそうだ、二人を見る限りあまり気が合うようには見えなかった。
「こんにちは」
「こんにちは…」
「新しい方ですか、こんにちはですー」
「自己紹介がまだだったね、私は明智香だ、これからよろしく頼むよ」
「私は大道寺さくらですー」
「天野天理だ…」
天野天理、その言葉に驚く。
「君は確かここのメンバーの中でも一番強いと言われている天理さんかね」
「さん付けしなくていいですけど…」
「天理君なんてどうだい?」
「いいですけど」
「私のことも好きに呼んでもらって構わないよ、天理君にさくら君、君たちとは仲良くなりたい呼び捨てでも構わないよ、チェスでは後輩の身だからね」
「明智…」
「ふむ、その呼び方で呼んでくれたまえ」
「フレンドリーな感じですか、香ちゃんなんてどうですか?」
「なかなかいいじゃないか」
それを機に明智、さくら、天理は親しくなるのである。
「ところで天理君、明日から部活はどうするのかね?」
「もういろいろとばれたし、行ってもいいか…私もチェス以外のことにも興味を示してみたいと思う…」
「やったー、天理ちゃん来てくれるのー」
「そうだ、もう演技をする必要もなくなった、さくら、いつも通り話そう、学校でも」
「もっちろんだよ、アリスちゃんとも話せるかな?」
「昨日話したんだ、もう、アリスとさくらも友達だ」
「やっと学校でも楽しい学校生活が始まるね」
「ふむ、ようやく満喫できそうだよ」
そして天理たちはチェスに戻るのであった。
「ただいま…」
「おかえりよ、ご飯できてるわ」
「ん…」
いつも通り食事をとり風呂に入り睡眠を取るのであった。
いつも通り登校する天理、学校では噂話が絶えなかった。
アリスと海士が付き合っていたがアリスが振った。
なにがあったかはわからないがその海士と磯野川が付き合った、海士や磯野川もいい方向に進展しているのだろう、しかしそんな噂など吹っ飛ぶような噂がほとんどだった。
黒龍と天理が付き合っていた。
表上では付き合っている、しかし実際のところ駒と探り合い。
「あ、天理さん、おはようございます」
「はぁ…おはよう…」
私は普通に注目されることなく地味に生きたかったんだけどなぁというような顔で挨拶をする、席に座る。生徒の人数も30人近くに戻っておりアリスに手を出す人間はいなくなっていた。アリスとさくらが当たり前のように天理の元へやってくる。さくらさんとアリスっ天理と仲良かったのなど声が聞こえたが気にせず。
「おはよー天理ちゃん、アリスちゃん」
「やぁ、おはよう、天理、さくら」
「おはよう、さくら、アリス」
すると教室内玄関から怪我をした堀下がやってきた。
「て、天理さん、黒龍さんに秘密をばらしてすいません」
天理はもう怒ることはしなかった。秘密なんてバレるのが早くなるか遅くなるかの違いだけ。
「ん…わかった」
それだけ言うとそそくさと行ってしまった。
それからというもの天理、アリス、さくらは一緒に食事をしたり天理は磯野川がいてもちゃんと部活に行った。さくらももちろんだ。アリスは見学している。
「おう、アリスか」
その声に少し怯えたが、もう慣れていた。
「やぁ、黒龍、君たちの付き合いにはなにか裏がありそうに感じるけどね」
「鋭いなお前は、つってもそういうのも悪くねぇだろ」
天理やさくらの試合を見ながら言う。
「さくらはなかなか上手いじゃないか」
「それに比べて天理は下手くそだな」
黒龍は新たに天理の情報を握った。
後ろから何者かの声が聞こえた。
「黒龍さん、本当に楽しいということは上手い下手が全てじゃないんですよ、重要なのは人間関係、信頼性、なんてその下手くそな人から教わりましたよ」
「明智か」
「アリス君もあの休み以来だね」
「明智、君は随分と天理、さくらと仲が良いように感じるね、でもわかるような気がするよ」
「察しがいいんだねアリス君は、これでもテニス部では先輩だからね」
アリスと明智もそれなりに友好的なようだ。黒龍はテニス部員一人に磯野川を呼ぶように伝える。やってくる磯野川。
「こ、黒龍さん、明智先輩まで」
「おい、天理をいじめてねぇだろうな?」
「はい、もちろんです、もうそんなこと絶対しません」
明智は知らなかったかのような振りで。
「磯野川君、そんなことをしていたのかい、そんなことをし続けると信用性が失われるよ」
そして。
「もう失われているけどね」
と小さな声で呟く。磯野川は謝った。黒龍は命令する。
「おい磯野川、お前天理と組め」
「え、でも前衛同士で組むのは」
「お前が後ろに付けばいいだろ、命令が聞けねぇのか?」
「は、はい、わかりました」
「ふむ、なら私も久しぶりに腕を振るおうかな、誰かラケットを貸してくれないかな?」
テニス部員の一人が明智にラケットを貸す。
「そうだね、前衛同士で組むのなら私も後衛同士で組むのが筋だね、誰にしようか」
「じゃああいつにしろ、後衛っぽいしな」
わかったかのようにさくらを指さす。
「さくら君か、ふむ、後衛だし問題なしだね、ではさくら君、本当の私たちを見せてあげよう、ね、天理君」
「おっけー香ちゃん、私前衛してみたかったんだよねー」
香ちゃんと言う呼び方に磯野川含め動揺を隠しきれないテニス部員たち。
「さくらが前衛か、明智は久しぶりだし少しは鈍ってるんじゃないのか」
天理が明智を呼び捨て、これにも動揺を隠せない。
「鈍っていても手加減はしないよ、手加減は相手にとって無礼に値する、そう天理君に教えてもらったからね」
勝負が始まり終わりを迎えた。結果から言うと明智さくらチームが圧勝だった。
「前衛って簡単だと思ってたけど結構大変なんだね」
とさくらは改めて前衛の難しさを実感する。
「前衛の先輩として何か言ってあげたらどうかね?磯野川君」
息切れしそうな磯野川。
「後衛もこんな大変なのね、前衛はいかに前に付くか、タイミングが重要よさくら」
「そうなんですね、でも夢がかなってよかったよー香ちゃん、香ちゃんと組めるっていう夢がね、ありがとー、黒龍さん」
黒龍とさくらが普通に話しているところを見てまたしても動揺を隠せないテニス部員たち。
「天理ちゃん、約束だよ、必ず私と組める実力まで上り詰めてきてね、もう一つの夢は天理ちゃんと組むことなんだから。もちろん私も天理ちゃんの相手にふさわしい実力者になって見せるよ、チェスでね」
「ん…わかった」
さくらの一つ目の夢は叶い磯野川と天理も組んだことによりほんの少しであるが信頼度が上がった。この先テニス部は安泰だろう。
それから数日後の土曜日
私、未来は朱音ちゃんとアリスちゃんと一緒に出掛けていた。朱音ちゃんは黒龍さんと普通に話せる仲になり、ゲームでの偽性格もほぼ過去の自分で間違いないと黒龍さんたちと突きとめることができた。海利さん、礼さんとは話せなかったものの光さんとはたまに話す機会ができている。アリスちゃんには前に会った天理ちゃん、さくらちゃんと友達になれたらしい。今日は黒龍さんとファミレスで待ち合わせ。
「そういえば未来先週の投票天才的に入れたんだよね、あたしは威圧的だったけど、なんで優しいに入れなかったの?」
「今でも信じられないからかな、なんであのゲームで私が勝ったのか」
「アリスちゃんは独裁的に入れたんだったかな?」
「そうだよ朱音、威圧的と独裁的は似ているようで似ていない、難しいところだよ」
「でも忠誠心に入れる人はいなさそうだよねー」
「いや、さくらは忠誠心に入れたようだよ、つまりどんな選択肢でも確実に入らない選択肢はないということだよ」
「でも、集計結果みたいなのはなかったね」
「それから未来が勝ったって言ってたけど実際は未来が勝ってないことになってるよね」
そんな話をしているとファミレスに着いた。黒龍さんのほかに隣に明智さんが黒龍さんと話していて向かい側にさくらちゃんと天理ちゃんが仲良く話していた。
「おう、きたか」
黒龍さんから声がかかる。
「あ、未来さんと朱音さん…アリスもか」
天理ちゃんだ。
「こんにちはですよー」
元気なさくらさん。
「待っていましたよ未来さん、朱音さん、そしてアリス君」
来年高校生になる明智さんの4人だ。私は話題を持ち掛ける。
「例のゲームと結果が違うんですよ」
「そこだよなぁ、光に電話してみるか」
声がうるさかったのか黒龍さんはスピーカーオンにした。
『なんだお前かよ』
「おい結果違うぞ未来が勝ったんじゃねぇのか?」
『あ~ゲームのヤツか、あたしは適当に全滅に入れたが多分人間の心理を探るために用意されたんだろうな、あの選択肢は』
「全滅に入れたのかよ、俺と一緒のところに入れてんじゃねぇ」
『知らねぇよ、あたしと同じところに入れてんじゃねぇ、だが未来が勝ったのは事実だぜ』
「それは事実なんだな、まあいいか」
『まあ、もうこのゲームに似た形式のゲームは起きないと思う、それだけは言えるな、いや、主催者次第かもな』
それだけ言うと通話は切られた。
「仲いいな…」
「おや、天理君、嫉妬かい?」
「なんで…」
黒龍さんと天理ちゃんもうまく行ってるのかどうかよくわからないけど悪いことは起きてなさそうだ。アリスちゃんは黒龍さん、明智さん側に、私と朱音ちゃんは天理ちゃん、さくらちゃん側に座る。
「だが俺は今の状況で未来、アリス、そしてさっき話した光、海士の姉に間接的だが海利、月山の妹に間接的だが礼、全員がいることは確定した。だがこの結果だ、実際にゲームを行った結果、勝ったのは未来、優しいではなく全滅だ」
ここで天理ちゃんからの言葉。
「この投票の答えは何があったか知らないけど全滅は答えのための選択肢…」
天理ちゃんは悟りゲームが本当に起きていることを多分わかってない。
「ちなみに天理ちゃんはどこに入れたのかな?」
「私は優しい…さくらが忠誠心で明智も優しい…さっきの話から本当にゲームが行われていた関係者のように聞こえたけど…」
「おう、その通りだぜ、俺は違うが未来とアリスは参加者だ」
その言葉に明智さんとさくらちゃんは動揺するものの天理ちゃんは全く関心を示さない。
「となると…全滅という選択肢が存在するということは先週の番組が放送され、たとえ未来さん以外のアリスが勝とうと結果は全滅に終わっていた…結果のための選択肢」
「僕にとっては何の意味もないゲームをさせられたことにもなるね…何も示すことなどできなかった」
「その意味に興味はないが全て実験に過ぎない…」
「これは君のような人間を救済するようなゲームのはずだったのに、むしろ僕が救済される側になるとはね」
「所詮、自分を変えられるのは自分しかいない…」
「いいや、そうとも限らないよ、天理君、君のおかげで私はいろいろなことが学べたからね」
さくらちゃんは天理ちゃんにくっついている。明智さん、天理ちゃん、さくらちゃんは何かものすごい友情を感じる。
せっかくだしこのメンバーで昼食にした。大人数の昼食。楽しい気分だ。
私は私の知る限りの人しか目を配れないけど、アリスちゃんの自殺を絶対に阻止して見せる。アリスちゃんを死なせはしない。
「天理…来い」
「ん…?」
俺は天理を明智たちのいない空間に呼び出す。やっぱりこいつの目はわかんねぇ、読めねえな。
「俺はお前の駒になる、だが忘れるな、俺は必ずお前を暴いて見せる、お前の本性をな」
「できるものなら…」
「いい度胸だ」
表上では付き合っていることになっているが実際のところは俺と天理は戦争中だ。恋なんて関係ねぇ、それは天理も同じだろう。この立場を利用し、お互いの利害が一致しただけ、そこのしれねぇ女だぜ。
黒龍はどこかに行ってしまった。入れ違いで明智がやってくる。
「天理君」
「ん…?」
「できることなら君にはさくら君を部長とし、副部長になってもらいたい、磯野川との件は決着がついたし時間なら十分にある、さくら君が信用し、さくら君を支えられる人間は君しかいないだろう、そしてさくら君と君のペア、実現してほしいものだ」
「まずはテニス部に関心を示せと…?」
「そう、天理君に足りないものは関心だ、もちろん私もこれからチェスにも熱を入れるつもりだ、まだ君に一度も勝てていないからね、さくら君にも抜かされるわけにはいかないからね、君にはやはり赤が似合う、燃える闘志が見たいところだ」
それだけ言うと明智はファミレスの中に戻る。
「さくらが部長は理想的だろう、むしろさくらが一番ふさわしい、だが…明智には悪いが私が副部長になることはないだろう…部長や副部長に必要なのは人望、そして信用性…もしそれらがあったとしても私にはない…なぜなら私自身が人間を誰一人として信用していないのだから、それは明智、さくら、黒龍、アリス、未来、朱音、全員含まれる…信用したところで裏切られ、ただ傷つくだけ…永遠…親友…語尾の悪い言葉だ…私は時には駒を騙し、駒を利用し、駒を助けて味方に付ける、それは私が一歩、また一歩と最後のマスに進むため…どんな手段もいとわない…」
天理の瞳は烈火の如くめらめらと燃え上がるようなそんな瞳をしたように見えた。
天理は関心を持たなければ面白い、楽しいと心の底から思ったことなどない。あのアリスさえ今では楽しいと思えているというのにだ。あの黒龍に本気で暴力を振るわれようが明智とさくらという表上親友、天理にとっては駒、アリスという障害という意味では共通点な人物、そんな人物から好まれても何をされても天理の心は動かない、そして変わらない。たとえこの先いじめられてもたとえこの先どんな被害に会おうと天理だけは他の6人のように感情が変わることはないだろう、むしろ情すらないのかもしれない。唯一情を露わにしたのは秘密がバレた時くらいだろうか。しかし、天野天理は謎が多すぎる。まだ彼女には知られざる秘密が隠されているかもしれない。それは彼女自身にしかわからない。暴くか暴かれるかの悟りゲーム。黒龍に暴かれるかそれともこのまま謎を貫き通すのか、天野天理がこの中学までに心を許した人間は誰一人としていない。親を含めてだ。彼女の真相にたどり着くものは果たしているのだろうか?
完
続編、悟りゲーム(パート2) @sorano_alice
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