なつかしいきおく
ブランコ、滑り台、シーソー、懐かしいな。
久しぶりの公園だな。小さい頃は毎日のように通ったのに。
あ、小さい莉紗が走ってくる。満面の笑みで。
僕も走って行こうか。そう思うと、突然気付いた。
(ああ、夢か)
小さい身体。幼い手。
それを理解した瞬間泣きそうになった。
この時間が永遠に続けば良いのに。
どこか映画を見ているみたいに、
動いている小さな自分と、
夢を見ている自分が別々の思考を持っているみたいだ。
そう思った瞬間、莉紗が何かにつまずいた。
小さい身体で受け身を取れるはずもなく、かえるみたいにに、
びたーんという効果音がつきそうなくらい派手に転んだ。
「りさ!!」そうか、まだ声変わりしていないのか。
久々に聴く変声前の自分の声は異質なものに聞こえるな。
そして瞬く間に莉紗はわあわあ泣き始め、顔はぐちゃぐちゃになった。
「泣かないで、、りさぁ。いたいのいたいの飛んでけー」
そういえば莉紗はこの言葉が好きだった。
小さい頃の僕はなかなか紳士だな。
「おうち帰って、お母さんにばんそーこ貼ってもらお!肩、かしてあげるよ。」
どこでそんなキザな台詞を覚えたのだろうか。
見ているこっちまで恥ずかしくなってくる。
どうせ母さんの好きな韓ドラのセリフの受け売りだろうけど。
「ぅん、かえる。」
莉紗を家の前まで送り届けて、手洗いうがいをして、
夕方の子ども番組のオープニングをノリノリで歌っている若かりし頃の僕を
顔にお気に入りのうさぎのキャラクターの絆創膏を貼った莉紗が訪ねてきた。
「これ、あげる!」
「、、りさが好きなやつなのに、いいの?」
「いいよー!トクベツだからねっ!」
「うん!」
「またあしたね!」
「うん、ばいばい!」
なんてちょろい男なんだ僕は。
オレオだけでスキップしてるじゃないか。
そこで目が覚めた。
懐かしい夢だったな。
それからしばらくの間、知らず知らずのうちに
頬が濡れていたことに僕は気づかなかった。
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