きっときえない

 我が家に帰り、ソファーに寝転んでテレビをつけると、ニュース番組でお盆についての特集をやっていた。

亡くなった人が初めて迎えるお盆を「初盆」と呼ぶらしい。


莉紗も初盆か。

莉紗の好きだったオレオでもお供えしようかな、なんて考えていたらスマホの通知音が鳴った。


拓馬:今からちょっと出てこれねー?

(まあ暇じゃない訳でもないし、夏休みを満喫するのもありか)

僕は「仕方ないな」とだけ返してパジャマのままだったTシャツを脱いだ。




「え、もうお前宿題終わったのかよ!俺のも手伝ってくれよ〜」

「え嫌だよ」

「アイス奢るからさ、な!頼むよー」

と、さっきから必死に僕を口説いてくるのはちょっと派手な友人、結城ゆうき拓馬たくまだ。僕は琢磨に誘われ、目的地も知らずに電車に乗っていた。まあ僕たちの最寄駅の隣の駅は割と栄えているから大方そこへ行くんだろうけど。


「てか、ずっと勉強してたのかよ!真面目か!」

「あいにく真面目なたちなんだ。それよりどこに行くんだよ」

「よくぞ聞いてくれました!君、この電車の行き先はどこだい?」

「市営海水浴場?」

「いっえーす!夏をエンジョイしようぜってことで!来年は受験だしさー?

勉強ばっかじゃ疲れんじゃん?だからかわい子ちゃんをあわよくばゲットしに行くんだよ!」

高校受験は中3から死ぬ気で頑張れば何とかなると聞いたことがあるけど、大学受験はそうは行かない。

「琢磨はちょっとは勉強しろ。それにナンパに友達を巻き込むな。

第一、水着も持ってないのに」

「固いこと言うなって、アイス奢ってやっからさ!」


全く、調子のいいやつだ。 

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