呪いをかける者

ツヨシ

第1話

子供の頃から不幸だった。

家は冗談かと思うほどに貧しかったし、おまけに父も母も姉も、物心ついた時から私に理不尽と無理難題しか言ったことがなかった。

四人家族だというのに。

小学校ではひどいいじめにあい、

中学では身に覚えのないあらぬ噂が広がって、学校一の有名人になってしまった。

――私はなんて不幸で不運なんだ。

と私は思った。

高校も同じ中学から来た人が何人かいたので、同様の噂で私への嫌悪が続いた。

――私はなんて不幸で不運なんだ。

私は強くそう思った。

県外の大学でも別の噂が広がって、やはり有名人になってしまった。

――私はなんて不幸で不運なんだ。

そんな私を見た数少ない友人が言った。

「生まれつき呪われている人もいるからな」

その言葉は私の心に強く突き刺さった。

そんなことがあるんだ、と思った。

そして社会人。

希望する会社に入れるはずだったのに、なぜか最後にどんでん返しで不採用になり、ランクが下の会社に入社した。

そこでは結婚が決まりそうになると何故か邪魔が入り破談になった。

それが四回も続いた。

会社も四十過ぎてリストラにあい、やっと入社した会社は二社連続で倒産した。

それも一か月余りで。

給料は未払いだ。

それでも派遣などでなんとか食いつないだ。

そして思った。

――私はなんて不幸で不運なんだ。

還暦を前にして、私を不幸にしている呪いについて考えてみた。

考えて考えて、毎日毎日考えて、数年後に結論が出た。

私を不幸にしているもの、私に呪いをかけているものは、それは私自身であるということに。


       終

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呪いをかける者 ツヨシ @kunkunkonkon

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