第2話  網膜が足りない、とは

 二月上旬。

 白内障の手術を受けるべく、行きつけの眼科から紹介状をいただき、某クリニックへ。

 そこで、はじめて知ったのです、私の網膜の実態を。


 眼球が大きすぎる、網膜に対して。

 網膜が百円玉だとすると、私の眼球は五百円玉。

 目玉を覆えるだけの網膜が、ないってことです。

 そういうことか、と合点がいきました。

 大学病院では、行きつけの眼科でも、網膜が薄くなりすぎて引きつれている、五年前は、様子を見ましょう、ということでしたが。


 今の先生は、仰るのです。

 手術をするも怖い、しないも怖い。

 これは、網膜の件ですが、肝心の白内障の方も、


「目の奥の状態が悪すぎる、右も左も。せめて片方だけでも良ければ」

 ということで、はっきり言われました。

「手術の予約はしません、レンズは入れられません」


 慰めのように、視野検査をしてみて、結論を出しましょう、みたいなお言葉。

 あきらめモードの私、一応、検査を受けることにして予約しました、一番早いのは二十七日とのことで、その日に決定。


 待合室に戻り、小説は、あきらめるかな、と思いました。

 せっかくいろいろネタが浮かんで、少し書き留めてもいたのに。けっこう長くなりそうなので、きっぱりあきらめるか。でも、一作でもいい、毎日、少しずつ書き続けたら、なんとか形にできないか。


 ちょうどその日、福岡の友人から励ましの手紙が届いてました。今年は白内障の手術を受ける、と連絡してあったのです。ハープを習っている彼女、すてきなハープのCDを同封してくれました。


 ハープが奏でる、古今の名曲集。泣きながら聞いて、二度、繰り返し聞いて、やっと涙が止まりました。

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