第20話 Little Romance(20)

「ひなたがな。 『女』になってしまって。」


志藤は思わず萌香にポロっとこぼした。



「え?」



「『大人の女』になってしまった・・」


ぐったりとうな垂れた。



勘のいい彼女はピンときて


「ああ。 そうなんですか。 良かったですね。 おめでとうございます、」


ニッコリと微笑んだ。



「めでたいんだか、めでたくないんだか。」



「いまどきの子にしてはちょっと遅かったくらいなんじゃないんですか? ほんと、どんどんキレイになってスラっとしてて、いいお嬢さんになりましたよね。」



いいお嬢さん・・




志藤は宙を見た。




「ま。 見た目はな。 中身は笑っちゃうくらいアホで幼いねんけど、」


思わず笑ってしまった。



「娘がどんどんキレイになってくところを父親はもう、真正面から見れへん。 もうそのへんでええわって。 いつも思う。 だって、ほんまに生まれたてのころからずうっと見てきて。 おれのモン以外のなにものでもなかったし。 他所の男にな・・『かわいい』とか『キレイ』とか。 そんなん言われることは、ほんまに悔しいって言うかなあ・・」



志藤は遠い目をした。




自分があっという間にゆうこをさらってしまったように


ひなたもどこかの男にあっという間にさらわれてしまうのかもしれない。



こんな時に


適当に遊んでそのままポイしてしまった過去の女性たちを思い出してしまった。



いったい


どんだけいたんだってくらい。


自慢じゃないけど、もう顔も思い出せないくらいいた。




志藤はもう


この場で土下座してその愚行を詫びたかった。



神様は


よう見てはるなあ。


ほんま


スンマセン!!





「な~~。 ひなた。」


放課後、ジャージに着替えた浩斗がまだ教室にいたひなたに声をかけた。



「え?」



「今度の日曜。 うちの体育館で練習試合があるんだ。 先生がおれ、ちょっと出してくれるってゆーから。 見に来てくんない?」


ちょっとテレながら言った。



「試合?」



「うん。 ようやく練習でもゲームに出してもらえるようになったし。」


スッと自分の前に立った浩斗がなんだかまた背が伸びた気がした。




「・・またでっかくなったんじゃない?」


と上目遣いで言うと、



「え? そお? なんかもう制服のズボンが短くなってきたって、母ちゃん焦ってたけど。」


浩斗は笑った。



もう小学生の時の彼じゃない気がした。




つきあうとか


そんなの全然まだわかんないけど。


でも、こうして二人で楽しい時を過ごすのはイヤじゃない。



「ウン。 じゃあ・・行くよ。」


ひなたはニッコリ笑った。



すると浩斗の顔がぱああっと明るくなって


「よっしゃ!! も、絶対にゴール決めっから!」


と、張り切ってバーっとすごい勢いで走って行ってしまった。



そんな彼の姿にひなたはクスっと笑ってしまった。




楽しいのが


いいよね。


ずっと笑っていようね。



少しだけ大人になって


恋をちょっとだけ知って。



ひなたは夕陽が差し込む教室でひとり佇んだ。

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My sweet home~恋のカタチ。12 --poppy red-- 森野日菜 @Hina-green

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