第4話 Little Romance(4)

ひなたと浩斗は、お互いの家を行き来するほど仲がよく、


男の子と女の子の壁を越えて、今も仲がいい。



母親同士も幼稚園の時からずっと仲が良くて、もう家族ぐるみのつきあいでもあった。



「浩斗はバスケやってんの?」


志藤は戻ってきてタバコを吸いながら言った。



「うん。 まだ走ってばっかだけど。」



「背も伸びたな。 前はひなたのが大きかったのに。」



「いちおう165あります、」


浩斗は得意気に言った。



他所の子供はでっかくなるのが早いなあ・・




つくづく思った。




「あ、いらっしゃい。 来てたの?」


ゆうこが子供たちをつれて買い物から帰ってきた。



「あ、浩斗くん、」


ななみも嬉しそうにやって来た。



「こんちわ。」


彼はちょっと照れて挨拶をした。



「お昼、食べて行きなさいよ。」



「今日はパスタだよ。 ママが得意なトマトとキノコの!」


ななみが言う。



「ひなたんちのメシ、うまいもんな~。」


浩斗は笑った。



勉強すると言いつつ、午後になるとみんなで公園に遊びに行ってしまった。



「テスト前だっていうのに。 なんなんだあいつらは、」


志藤は呆れてゆうこに言った。



「ま、おとなしく勉強するとは思えなかったけど。 でも、浩斗くんってほんと面倒見がよくて、涼太郎とも一緒に遊んでくれるし。」



「ナリはでかくなっても中身はあんまかわんねえな、」


志藤は笑った。



バスケットボールを持って、公園のゴールで遊んでいた。



「ななみ! こっちパス!」



「ドリブルだよ、ドリブル!」




いつもは家で遊ぶことが多いななみだが、この日はみんなと外で一緒に遊んだ。





ボールを持って夢中で遊んでいると


突然、ななみが咳き込みだして、しゃがみこんだ。



「・・ななみ?」


ひなたは驚いて、駆け寄った。



ななみは喉を押さえるように苦しみだした。


そして、昼に食べたものを全部吐いてしまった。



「だっ、大丈夫??」


浩斗も驚いて背中に手をやった。



「ぜんそくの発作かも! 家につれてかえらなくちゃ!!」


ひなたは慌てた。



ななみは小さい頃から小児喘息で、何度も入院をするほどだった。


身体が弱く、学校も3分の1は休むほどであった。



「おれ、おぶっていくから。 ななみ、ほら!」


浩斗が背中の出すと、



「よ・・よごれちゃうよ・・」


苦しみながら、ななみは遠慮をした。



「いいから! 早く!」


浩斗は強引にななみを背負った。



「涼太郎は荷物持ってきて! ひなたは先に帰っておばさんに!」



「う、うん!」


突然のことにみんな慌てていた。



「ななみ!?」


戻ってきた子供たちにゆうこと志藤は慌てた。



ななみはまだ苦しそうに咳き込んでいる。



「急に苦しみだして・・」



「喘息の発作かも。 今、病院に電話するから。 幸太郎さん、車を出して。」


ゆうこはななみを抱きかかえた。



「わかった。」



「ひなたは凛太郎たちをお願いね。 今、病院に連れていくから。」


「う、うん・・」


ひなたは神妙に頷いた。



「だいじょぶかな・・」


浩斗は時計を見て言った。



「いつも行ってる病院だから。 ここんとこずっと調子良かったから。 発作とかも全然なかったし・・」


ひなたもため息をついた。



そして、彼の着ているトレーナーを見て、



「・・ヒロト、背中。 ななみが吐いたので汚れてる。 着替えなよ。 あたしのパーカー貸してあげる。」


と言った。



「え? そう?」



「洗濯するから。」


と、無理やり彼のトレーナーを脱がせた。



「ばっ、バカ! いいよ! 自分でするから!」


恥ずかしそうに言った。



その時、手が触れてしまって、一瞬二人は一緒にドキンとした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る