第7話激化
その様子を可笑しそうに笑いながら見下ろす正美と美香と加奈子。
「ムカつくなら、どうすればいいとおもう…?」
サキが由真の耳元で語りかけてくる。
由真は感覚が分からなくなった唇を動かして
「懲ら…しめれば…いいと…思う…。」
その一言にサキはニヤリと笑う。由真はもうどうして良いのか分からなかった。
頭は真っ白になり、生きた心地がしない。このまま美晴達を庇い続ければサキ達に酷い目に遭わされるのは確実。
そうなるのだけは嫌だった。寧ろ鈍くて舌足らずな美晴と絶交出来るのだからいいやと自分自身に言い聞かせる。
いつもおどおどした感じの美晴に苛立ちを覚えていたのは事実だからと。
それに、これは立派な正当防衛なんだと必死に言い聞かせる。
自分は何も悪くないのだと…。
この日、明日美は遅れて学校にやって来た。奈央に里沙、裕太はトイレにでも行っているのか教室には居ない。自分の席まで行くと、そこには…。
教科書がビリビリに破かれており、椅子や机の上に散乱していた。
無惨な教科書の破片には「本山明日美」と書いてある。
紛れもなく自分の物だ…。
突然の事に困惑していると、突然背後から誰かに突き飛ばされた。
「痛…。」
明日美が、痛そうにお尻を擦る。その背後ではサキ達が嘲笑っていた。
「正美、アンタなかなかやるじゃないの。」
サキが面白おかしそうに笑っている。会話の内容から察するに明日美を突き飛ばしたのは正美らしい。
「アンタ学校に来ないからてっきり事故にでも遭って死んだかと思った。」
加奈子がカラカラと笑いながら言った。すると美香が
「なんで死んでないのかな?マジで残念なんだけど。」
と本当に残念そうな口調で言う。
明日美は床に尻もちをついたまま俯く。その態度が気に入らなかっとのかサキは明日美の背中を思いきり蹴り上げる。
「お前、何か言えよ。アタシらに散々逆らっておいて今更大人しい子振る気かよ。」
サキが教室中に聞こえるような怒声を上げるが誰もが我関せずな態度を貫く。
背中を蹴り上げられた明日美は床に前のめりに倒れるがそれを見てサキ達は可笑しそうに顔を歪めていた。
明日美は痛む身体を起こし席に就くと何やら滑っとした液体がスカートに染みてくる。
椅子から立ち上がろうとするが何故かお尻が椅子にくっついて立ち上がれない。
どうやら瞬間接着剤を椅子に塗られたみたいだ。
明日美は渾身の力で椅子からスカートを引き剥がす。
すると、スカートがビリビリとすごい音をたてて破けてしまう。
「うっわ〜マジでダサー」
教室の隅々からそんな声が聞こえてくる。誰もがいじめをゲーム感覚で楽しんでいたのだ。
ビリビリに破かれてしまったスカート。親になんて言えばいいのだろう…。
明日美の頭の中にあるのは両親のことだけ。
何も心配なんて掛けたくないから。
だから頑張って耐えなくては…。
今日ノソライロ〜番外編 NAZUNA @2004NAZUNA
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