第29話 試練の洞窟2
試練は続く。
大きな岩を所定の位置へと動かす第4の試練。
大岩は4人で目一杯力を込めて押さないと動かないの。引っ張る事はできないから、隅に大岩が挟まった時は失敗したものと途方に暮れたけど、奥の看板に救いがあった。元の階段を上がり、再び下りると、なんと大岩は元の位置に戻っているとの事。
「助かった!」
「まぁ、この救済措置は当然だろう、こりゃ難しいにも程がある。しかし誰が大岩を元に戻すんだ?」
「戦士殿、野暮な事は言わぬが吉でござるよ」
「そうだよ、深く考えちゃダメダメ」
「ま、そうだよな。こういうのって今に始まった事じゃねぇし」
そして8回目の大岩・チャレンジでどうにか所定の位置に大岩を収める事ができた。
多分、上から見下ろす事が出来れば容易いんだろうね。ただ、誰もそんなこと出来るはずない…ハズ。
第5の試練は何だろ、楽なの来ないかな? そんな事思いながら階段を下りると、いきなりガニラスの群れに囲まれた。
以前の地獄のハサミでのトラウマはあっだけど、戦士はリベンジの気持ちが強かったんだろうね、武道家よりも素早く1体仕留めてくれた。
「やった! 戦士!」
脇を見ると、武道家の足元にも1体倒れていた。思わぬ展開にあたふたするガニラス。あの時と真逆だね、申し訳ないけどアタシ達は先を急ぐんだ。残りの2体は遊者の攻撃呪文で仕留めさせてもらった。
カニ系の魔物はガチガチの装甲だし、本来は呪文で対抗するんだろうけど、自慢のパーティの火力を甘く見てもらっちゃ困るよ。
第6の試練は回転岩。
大部屋一面に回転岩ってのが地面に埋められていて、なぜか行きたい方向へ進めなかった。ゴールに近づいては遠ざかる。何度も壁にぶつかって、イライラさせられたけど、持ち前の粘りで階段の前まで辿り着く事ができた。
うふふ。3歩進んで2歩戻るとか、まるでアタシ達そのものだね。
第7の試練を直前に疲労がピークを迎えようとしている。重くなった身体に鞭打って階段を下りる。あぁ…膝が痛い、喉も乾いた。
でも次が最後だ、頑張れアタシ!
階段を下りきって狭い通路を歩く。松明の灯りで通路の先に人が居る事はなんとなく分かった。アタシ達は警戒しながら近づく。
間もなく最初に案内してくれたおじいちゃんだと気付いた。
「よくぞこの試練を乗り越えた! さぁ、この先の扉を開けるがよい」
「しかし御仁、試練は7つのはずでは?」
「むむっ? 聞き間違いじゃぞ、試練は6つじゃぞい」
「そんなハズない、アンタは確かに7つと言った」
「なんと? ワシが言い間違えたと言うか!」
「おじいちゃん…髭がずれてるよ?」
「えっ?」
「それは嘘だけど、…なんて言うか不自然だよ。さっきのおじいちゃんと見た目は一緒だけど、立ち振る舞いとか話の間合いも違うもん」
「ちっ! せっかく模写呪文かけてもらったってのに、こんなにあっさり見破るか? さすがと言うべきだな。ああ、最初の試練の時に案内した俺だよ」
おじいちゃんの身体を覆う様にから煙が出て、あっという間に若い男へと姿を変えた。
「ふ~、でも割りと面白かったか、今度は勇者様に化けてみてぇな。あ、その扉の左に
模写呪文っていつか遊者も使える様になるのかな? なら…アタシもおっぱいの大きい踊り子とか…
「商人、なんか色々妄想してるとこ申し訳ねぇけど…」
「はっ! や、別に踊り子とか興味なんかないよ、ないって! ありませんって!」
「商人殿、その節は誠に申し訳なかったでござる」
「ドンマイ商人!」
「っ! だから、違うって!」
蔦を払い姿を現した扉を押し開け、据えた匂いがする部屋へ入った。
殺風景なその小部屋の中央に、大きな剣を
埃をかぶった金貨を1枚だけ拝借する。
これまでの頑張りが無意味なものになるような気がして、沢山貰っておこうという気持ちはさらさらなかった。
奥に1階まで一気に戻れる階段があり、皆が思い思いに語りながら、出口を目指した。
最初の試練で出会った商人が、出口前で声を掛けてきた。
「さすがだね、同じ職業として誇らしいよ。この先も頑張ってくれ!」
「ありがとう、お互い商人の道を突き進みましょう!」
外は丁度、陽が沈むところだった。そりゃクタクタにもなるはずだよね。皆、お疲れ様でした。
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