第23話 久しぶりの新大陸を前に…
「せいっ!」
武道家の一撃! 地獄のハサミは倒れた。
「改めて…これは凄まじい攻撃力にござる。堅甲な緑ガニの甲羅をいとも容易く切り裂くでござる」
ただ、悪目立ちするので金箔部分はそぎ落とした。そのままだと黄金の光に誘われて魔物はやたら寄ってくるし、城内や町の中では、盗賊や追い剝ぎにだって気を配らなくちゃいけないからね。
勿論、そぎ落とした金は瓶に詰めた。どこか金が高く売れそうな大陸で売るつもり。
「ホント凄いね! 武道家っ、頼もしいパートナーだね!」
「まったくにござる。友には感謝しかござらん。しかしながら…この牙を携えたヒドラと呼ばれる魔物がいるのでござろう? それは脅威にござる…」
「だよね… そして裏の世界ってなんの事だろう?」
「ふぅむ… 謎でござる…」
アタシ達は一抹の不安を覚えた。
チョッキンッ! 戦士の一撃! 地獄のハサミを倒した。
「あのさ… 俺の大ばさみも少しは見てくれよ」
アタシ達は砂漠の国を後にし、遠く離れた東の町まで戻ってきた。
強い日差しに砂で歩きにくい足元、すっかり疲れ果てたよ。こればかりはレベルとか関係ないね、暑いものは暑い。
適宜、水分補給を行い、こまめに休憩を挟んだせいか、早朝出てきたってのにすっかり日が暮れちゃった。
町の道具屋にて、北東にある洞窟で新大陸へ道が開通したとの情報を得て、アタシ達は久しぶりの新大陸に向けて前祝いをすることにした。
「ふぁー、エールが沁みるねぇ… 火照った身体に優しいよ」
「ね、一日頑張ったから美味しいんだろうね」
アタシ達の会話に男メンバー達はどこかうわの空。
あぁ… ここって夜の町って言われるくらい、昼と夜ではホント別の顔になるんだったよね。スケベ面した男たちがホイホイと劇場へと吸い込まれていく。
まぁ、あれだけ出るとこ出てて、引っ込むとこ引っ込んでたら見とれてしまうのも分かるよ。
「だよねぇ、戦士、武道家?」
「いや…」
「その…」
「商人、胸が小さくたって大丈夫だよ。どこかに必要としてくれる人が居るって!」
「うっ… あんなの脂肪の塊だよ! 動きにくいだけじゃん、なんだってのさクソぅ…」
ジョッキのエールを一気に飲み干した。
「店員さんっエールぅ! エール5杯持ってきて! そして戦士っ武道家っ! そこに正座!」
「おいおい… 商人、酒癖悪いな」
「あ? 戦士なんか言った?」
「いや、なんもない…」
目の前で正座する2人を横目に、アタシは運ばれてきたエールを豪快に呷った。
「………なぁ」
「……………」
「あんた達もでっかいおっぱいが好きなんか?」
戦士・武道家は逃げ出した!
「うぉい! なんだよ二人とも… もう明日からメタルスライムって呼ぶわ」
「まぁいいじゃん、私が付き合うよ商人♡」
「遊びに〜ん、アンタは心の友だよぉ」
「はいはい、でも飲みすぎ注意だよ。明日新大陸へ向かうんだからね」
女二人気兼ねすることなくお酒を楽しんだ。アタシだって飲みたい夜くらいあるさ。
たらふく飲み、ふらつく足で辛うじて宿に戻りそのまま床に倒れる様に横になった。
「あぁ… 床が冷たくていい感じぃ… …ぐぅぐぅ」
そして夜が明けた!
(例のBGM入れてください)
「うぅ… 頭いたい…」
二日酔いの朝には、毒消し草を丸かじりすると少しは楽になるね。さて顔を洗って、身支度を整えたら、さっさと食堂へと向かおう。
「みんなおはよう!」
「おう! 今日はいい天気だぞ。新大陸に向かうにはもってこいの日和だよ」
「おはようでござる商人殿。拙者、新大陸に向けて今からワクワクが止まらんでござる!」
「おっはよ~ ささっ、早く朝ごはん食べよ。今日も大冒険が待ってるよ」
労働者たちで溢れかえる賑やかな食堂で、アタシ達は談笑しながら朝食をとった。野菜たっぷりのシチューを飲み干し、冷えた水で締めくくり。
さぁ今日も元気に行こう。アタシは力強く宿の扉を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます