第12話 乙女は洞窟を抜け、塔へ上る

魔物の群れが現れた! 

遊び人は爪を磨きだした!


「あっ こら! 遊び人!」


「えへへ~ 乙女は爪に気を遣うのよ~ 商人も見習った方がいいよ」


「ばかっ ほっといてよ」


「せやっ!」


二人のやり取りを一喝するかの如く、武道家の強烈な回し蹴りが炸裂し、大アリクイは力尽きた。 


「さっすが! もう頼りになる~」


「油断大敵でござる!」


言いながらも、武道家の口元は緩んでいた。


アタシはパーティを組む際に、厳守しようと決めていた事がある。


一つはパーティのモチベーションを下げないこと。そして、もう一つが皆の頑張りに対し、労いの言葉を忘れないこと。

パーティを組んで幾ばくも無いが、その事だけは徹底している。


「はい、お疲れ様でした。見て見て! 更に6G見つけたよ」


「感心でござる」


「これはこれで頼もしいな」


「よし、薬草と毒消し草とキメラの翼を買って、そろそろ塔に向かおうよ」


離島にそびえ立つ大きな塔にかかる橋はないが、村人から、近くの洞窟から塔へ入れるという情報を仕入れていた。


町へ戻り、それぞれが道具袋いっぱいになるまで道具を買い込んだ。


で、そのまま洞窟へと向かおうとも思ったが、焦りは禁物。英気を十分養って、明日また頑張ろう。


翌日


「ここから入るのでござるな… 腕が鳴るでござる」


洞窟前に立つと、中からの冷気がもれ、否応なし緊張感が走る。


「ほぉ~ なかなか厳かな造りしてるな、おそらく今までより、強いモンスターどもが出てくるだろう。皆、気を抜くなよ」


「心得たっ!」


「うん、分かった!」


「はーい」


アタシ達は陣形を崩さず、薄暗い洞窟へ歩みを進めた。でも平原と違い、曲がり角で突然モンスターと出くわし、先手を取られる事もあったから、この場は気配を察知できる武道家に先頭にした。何事も適材適所。


草原では見た事ない魔物に、少したじろぐ場面もあったけど、十分にレベル上げをした甲斐もあって、目指す塔への入口まで、無事たどり着く事ができた。


「ふ~ ここから塔に上れるのか…」


「皆、特に疲れもないのなら、このまま塔も攻略してしまいたいんだけど、どうかな?」


「任せるよリーダー」


「拙者は気力、体力とも十分でござる。いざゆかんでござる!」


「リーダー、いけいけ~」


「よし、どんどん行こう!」


何から何まで初めてだらけだが、文字通りアタシ達は力を合わせ、確実に塔の天辺へと歩みを進めた。


戦闘のたび、大量に買い込んだ薬草がみるみる減っていく不安はあったけど、同時にレベルも上がり、この塔の難敵フロッガーでさえ、武道家、戦士の一撃で仕留められる程になった。


「お、この階段が最後だな、最上階に着いたみたいだ」


結局、宝箱は一つ残らず開けられていて、ここでの収穫は、おおありくいとバブルスライムが落とした、薬草と毒消し草1個ずつだけだった、大方予想していた事だが…


せめて… せめて、この塔にある鍵だけは持って返りたいと、切に願った。

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