第7話 アタシはアタシの道をゆく
来るなと言われた斡旋所へ向かうのは、少なからず抵抗があったが、昨晩のおじさんの力強い檄のお陰で、どうにか奮い立つ事ができた。
「なんじゃ! 何しに来おった! お前はここに来るなといったはずじゃ!」
「いいじゃない! アカデミーを卒業したんだから、自由に来ていいはずよ!」
「ぐぬぬ… アカデミーの面汚しめ。…ふん、まあよい。どこの勇者様がお前などパーティに加えるものかっ」
「ふん! いいもん、アタシはアタシの道を行くから」
「愚か者め、血迷ったか? ここでお前の道など…」
「もう、うるさいなぁ! 向こうに行ってて、アタシにはおじいちゃんの長話聞く時間なんてないの」
「なんとっ! そこまで啖呵を切るなら好きにすればよいわっ!」
斡旋所は沢山の人で溢れていた。この場で声をかけるのは不安があったが、アタシの胸には必殺の古文書がある。
躊躇う気持ちをかなぐり捨てて、声を大に叫んだ。
「だっ… 誰か、ア、アタ…私と一緒に魔王討伐の旅に出ませんかっ!」
「オモシロソーじゃん! 私行くよ~」
真っ先に同意してきたのは、バニー姿がよく似合う遊び人だった。
「よーし、おいでおいで~」
「よろしくね、商人さん」
「うん、こちらこそよろしくね」
ひょっとしてこのままいける? …と、幸先がよかったのもここまで。ここからは、まさに茨の道だった。
「は? なんで商人なんかと一緒に旅に出なくちゃ行けないんだよ、俺は勇者様と世界中を旅する為に、ここに来てるんだ」
「商人と遊び人の凸凹コンビに何ができるって言うの?」
「今すぐ目の前から消えろ」
「黙れ…」
予想はできたが、まあ、けんもほろろだった。
「商人、うまくいかないねぇ…」
「う~ん、でも諦めるのはイヤだ」
初志貫徹。アタシはめげる事なく毎日足しげに斡旋所に通い続け、そして30日目にとうとう一人の戦士が話を聞いてくれた。
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