第73話
*
ナルヤ王国。
ナルヤの若き王、ナルヤ・デ·カシヤが玉座について威厳を放っていた。
彼のもとにヘラルド王国で武力で名を馳せるローランド伯爵が使者として来ていた。
有名というだけあって自らを誇るローランドはナルヤの王の前でも堂々としていた。
「つまり、同盟を結ばないかってことだな?」
「左様でございます。悪い提案ではないかと!」
先日、ブリジト王国からも同じような提案が来ていた。今となってはそのブリジト王国の存在はないが。
もちろん、カシヤにそのつもりは全くなかった。
「君たちもルナンを狙っていると? 我われと手を組んでルナンを占領しようというわけか」
「否定はしません。陛下、ヘラルドと同盟を結んでいただければ絶対後悔させません!」
ローランド伯爵がマナを見せつけながらそう叫んだ。威圧感を与えるための行動だった。
しかし、カシヤはくだらないというように耳をかっぽじった。
「ヘラルド王国は最新の情報に疎いようだな。君がヘラルドで有名な武将だなんて実に馬鹿げた話だ。君の武力はヘラルドでしか通用しない。朕の好奇心を掻き立てることすらできないようなやつはもう帰れ、ヘラルドの使者よ」
その瞬間、カシヤの周りから強力な光が噴き出す。その赤いマナの影響で王宮までもが揺れ始めた。
ローランド伯爵のマナは一瞬にして吞み込まれ、圧倒された伯爵は地面に座り込んだ。
言葉を失うほど強力なマナ。
「……きっと後悔しますよ。私たちもルナンを狙ってますから……直にお会いすることになるでしょう……!」
最後のプライドを守ろうとそう言っていたが弁が立つのはそのつまらない舌だけ。
ローランド伯爵は情けない姿で宮殿を出て行った。圧倒されて立ち上がることもできなかった。
「情けないやつめ」
王はくだらないという顔で立ち上がり、玉座を離れた。
彼がいなくなると、状況をただ見守っていたフランが十武将に向かって言った。
「ルナンの斥候の捜索は終わりましたか?」
「はい、殿下。情報部を通じて一人残らず捕まえているところです。斥候が放たれる時は雑な場合が多いので難しくもありません。どうやらローネン公爵の手下のようです」
「なるほど。徹底的に利用してください」
ルナンの王とローネンは愚かな人間だ。ローネンを敵手とも見なさずにいた。彼らが敵視しているのはただひとり。
そして、もし狙い通りにいけば、その人物はむしろルナンの滅亡を喜ぶだろう。
それなら、それを最大限に利用してやろうというのがフランの考えだった。
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