第71話
3か月後。
ルナンの王宮。
ルナンの王が激怒した顔で息巻いていた。顔を真っ赤にして怒りを抑えきれずにいるといおうか。
急に呼び出されたローネン公爵がそんな王を見て怪訝な顔で聞いた。
「陛下、一体何事ですか?」
ローネンの質問に王は玉座の肘掛けを殴りつける。
「ロゼルンのやつらめ、調子に乗りやがって! 約束の補償金を急に渡せないだと? 朕はやつらを絶対に許さん!」
王の言葉にローネンだけでなく呼び出された貴族たち全員が眉をひそめる。
確かにとんでもない話だ。よくもロゼルンごときが。そんな考えで埋めつくされていた。
そのロゼルンを救ったのは自分たちでもないのに。
「すぐに滅ぼしてくれる。戦争を準備しろ!」
王は断固とした表情を浮かべた。
王もローネンも似たような存在だが、それでもローネンの方が理性的だった。
「陛下! 戦争は無理です」
だから当然戦争に反対した。
「いまだ降伏をしていないブリジトにはすでに多くの兵力が投入されており、領地の整理に追われている状況です」
ブリジトの領土に目がくらみ、すでに多くの兵力がブリジトに投入された状況だった。
エルヒンがブリジトを占領すると言ったときは少しの兵力しか与えられなかったが、ブリジトの王都を占領してからは次々と領主たちが兵力を補充すると乗り出したのだ。
「それでも黙って見過ごすわけにはいかん。よくも、小国のくせに!」
王の言葉にローネンは悩み始めた。王は一度怒り出すと絶対に意見を曲げない性格だ。弱者には強い。すると、貴族たちが口を揃えて王に主張した。
「陛下、エルヒン伯爵を送ってはどうでしょう? そしたら戦争をする必要もありません。あいつら、エルヒン伯爵が行けば怖気づくはずです!」
「そうか。その手があったな。エルヒンを撤収させたらこのざまとは。よし、エルヒンを使臣として送れ。約束を破った見返りとしてロゼルンに10倍の賠償金を要求する。それをよこさなければ戦争だ。それと、人質も送るように。そうだな、あの時来てたあの王女はなかなかよかったぞ」
後先のことは考えてもいなかった。ナルヤのことは完全に忘れたまま。
「陛下、ですがそうなるとエルヒンが必要なときに利用できなく……」
「聞きたくない。では、公爵はこのルナンがロゼルンなんかに蔑ろにされたのに放っておくというのか? 打つ手はエルヒンを送るか兵力を送って滅亡させるかのどちらかだ!」
ルナンの王は断固としてそう宣言したのであった。
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