第50話
*
[獲得経験値一覧]
[戦略等級 B×2]
[D級でA級の相手に勝利 ×4]
[レベル21になりました]
エランテを倒したことでレベルが19から21に二段階跳ね上がった。
19から20で300ポイント。
そして、20から21で300ポイントを獲得した。
既存の100ポイントを合わせると全部で700ポイントとなる。
レベルが上がるほど次のレベルまでに必要な経験値が増える。
×4の経験値を得てもレベルアップが二段階止まりなのはレベル20に到達したから。
まあ、それでも上がったということが大事だ。
700ポイントあるため、ひとまず武力を強化した。
[武力65になりました]
残ったのは400ポイント。どう使おうか悩んでスキル購入に入った。
今回の戦争で派手なスキルを使って士気を上げたから、攻撃スキルよりも実利のための防御スキルが一つ欲しかった。武力の高い武将が大勢いるようだし、戦略に失敗したら逃げて命拾いができるような防御スキルが必要だ。
問題は、俺の思い通りにスキルを購入できるわけではないということ。
購入すると自動でスキルが生成されるシステムなのである。
そうして生成されたスキルはどれも同等の威力を持つ。
何度も使うことでスキルの熟練度、つまりレベルが上がって強化されるのだ。
とにかく、今必要なのは紛れもなく防御スキルだった。
だから、200ポイントを使ってスキルを購入した。
[30秒間無敵を獲得しました]
生成されたのは微妙な数値のスキルだった。
確かに、逃げる時に必要なスキルではあるが、その時間に物足りなさを感じだ。
もっと長かったらいいのにというか。
*
「戯言を抜かすな! 貴様、気が狂ったか?」
バウトールが鋭く睨みつけて聞き直した。
「何度も確認しましたが事実のようです!」
その目つきに千人隊長が怯え上がりながら答えると、
「2万の兵力が全滅してエランテまで死んだ? ふざけるな!」
バウトールが千人隊長の体を足で蹴飛ばした。
地面に転がった千人隊長は体勢を整えてまた急いで跪く。
それでも事実は曲げられないため彼はひたすら頭を下げ続けた。
「攻城戦を禁ずるよう言ったはずだ。一体どうしたら2万の兵力が全滅するというのだ!」
「陛下、私もそこまでは……」
バウトールは抜き取った剣を振り回した。
そして、ロナフの降伏を受けて領民を全員殺すよう命じた後、領主城に戻ってはメイドたちの上に馬乗りになって殺すことに狂奔する。
「たっ、助けてください!」
「きゃああああーっ!」
領主城にはしばらく悲鳴が響き渡った。
殺戮を終えたバウトールは息巻いて独り呟く。
「エランテが……」
自分に最も忠誠を尽くし、これからの戦争でも活躍するはずだった三剣士の一人だ。
エランテはこうも虚しく死ぬような人物ではなかった。
よくも、俺の大切な部下を殺すとは。
「エランテは、本当に死んだのか?」
怒りに身を震わせるバウトールの前に、状況を少しでも調べようと動いていたイセンバハンが駆けつけてきて跪いた。
「本当のようです、陛下……」
「詳しい内実は……?」
「そ、それが、まだ把握できていません。ですが、何としても明らかにします!」
イセンバハンのその言葉にバウトールは首を横に振った。
「もういい。その必要はない。すぐに王都に進撃する。殺してやる。全員殺してやる。ロゼルン王家を皆殺しにして、エランテの冤魂を慰めてやらねば!」
そのように叫ぶバウトールは目を血走らせていた。
*
敵を阻止して真っ先にやったのは王都周辺の食糧を処分することだった。
巨大都市といえる王都を取り囲む大きな田畑。
幸いにも稲と小麦は収穫の時期ではないが、畑となれば話は違う。
3万の兵力を投入し、近くのものは全部収穫して少し遠くのものはすべて燃やした。
そのままにしておけば敵の食糧となりかねないため仕方がない。
そして、すぐにロナフから敵が進撃を始めたという偵察兵の報告が入った。
俺にとってはむしろ朗報だった。敵が憤怒して急ぐほど我が軍にはプラスになるからだ。
エランテの死と2万の兵力の全滅で怒りを掻き立てられた王による支配を切実に願った。
そして、その願いは現実となった。
敵軍は大急ぎで王都へ進軍してくると王都の城郭の前に駐屯地を編成したのだ。
[ブリジト王国軍]
[兵力:35,500人]
[士気:90]
[訓練度:80]
よく訓練された兵力だけあって急な進軍にも戦列を崩さなかった。
真っ先に到着したのは敵の鉄騎隊。
しかし、攻城戦になると鉄騎隊は何の役にも立たなくなる。
少なくとも門が開くまではの話だ。城門が開けばそこで活躍するのは鉄騎隊だから。
駐屯地を編成したブリジト王国軍はすぐに王都の城郭に突撃してきた。
これも俺にとっては朗報。
ロナフから王都まで復讐心に燃えて休まず進撃してきたこと自体が俺の思惑通りだった。
急速な進撃。
これは敵の大きな失態だ。
その進撃の速さに補給部隊が速度を合わせることはできない。
つまり、兵糧はロナフに置いて主力部隊だけが進撃してきたのだ。
歩兵隊はすぐに食べる分だけの食糧を背負って走ったはず。
長期戦になったらロナフを通じて補給を受けるつもりなのだろう。
だが、その考えは致命的な毒に他ならなかった。
*
「陛下、あれがロゼルンの王都です」
バウトールは王都の城郭を見ながら歯を食いしばる。まだ怒りが収まらなかった。
「ですが、敵がどうやってエランテを倒したのかを把握した上で突撃した方がよいかと」
参謀イセンバハンは早まるバウトールにもう一度慎重になることを求めたが、快剣と呼ばれるガネイフがイセンバハンを睨みつけて代わりに声を張り上げた。
「無礼だぞ! そんなのは戦ってみればわかることだ!」
ガネイフの言葉にバウトールもうなずいた。
「そのとおりだ。イセンバハン、何度も同じことを言わせるな」
「……申し訳ございません!」
バウトールが睨みつけるとイセンバハンは慌てて後ろに下がった。
「だが、油断はならん。ガネイフを投入するつもりだ。兵士たちよ、ロゼルンの王都を占領するのだ! 血の祭りが我われを待っている!」
王の命令と共にブリジトの歩兵隊が一斉に突撃を始めた。
*
俺は城郭の上で敵軍を迎えた。
ロゼルン王国軍の士気は92。宝物庫で見つけたリンキツによってユラシアの指揮力は97となり、そのおかげか王国軍の士気が+2も上がっていた。
ユラシアは今回もそんな王国軍を率いて先頭で兵力を指揮していた。
「矢を放て! ありったけの矢を浴びせるのだ! 石も忘れるな!」
ユラシアの命令に従って各指揮官がそのように叫ぶと一斉に矢が放たれた。
ルナンの援軍も同じくそれに従った。
圧倒的に有利な状況。
訓練度はロゼルン王国軍もルナンの援軍もひどい水準。
だが、籠城戦は訓練度の低さを相殺してくれる大きな武器だった。
城郭という大きな盾と高い士気なら十分に勝算のある戦いとなる。
ロゼルンの王国軍とルナンの援軍を連合軍と指称すると、[連合軍29,443人]と[ブリジト王国軍35,500人]の戦闘が始まった。
我が軍が圧倒的に有利な戦闘!
敵は空から降り注ぐ矢の雨を迎えた。
突撃するブリジトの歩兵隊の悲鳴が大地に広がっていく。
歩兵隊の戦列の先頭が降り注ぐ矢の雨に倒れた。
[連合軍 29,444人]
[ブリジト王国軍 34,230人]
その攻撃で約1000人の兵士を失ったブリジト。
敵はその犠牲を踏み台にして城壁に梯子をかけることに成功した。
そうするほどにこっちでは矢を放ち続けて梯子を上ってくる敵軍には石を浴びせた。
[連合軍 29,300人]
[ブリジト王国軍 32,110人]
矢が尽き果てる頃にもなると王国軍の数はさらに減っていた。
だが、矢の援護が消えると同時に梯子を上ってくる敵軍の数が増えたのだ。
一方、連合軍も必死で敵兵を阻止した。
石を投げ落として城郭の上に進出できないよう槍と刀で突き落とす。
この戦闘が2時間以上も続いた。
俺もユラシアもジントも梯子を上ってきた敵は容赦なく一撃で斬り倒した。
当然ながらブリジト王国軍は被害を受けるばかりだった。
城郭の上からは駐屯するブリジトの状況が一目でわかった。
ブリジト王国旗のはためくところに派手な鎧を纏ったブリジトの王がいた。
視野に入れることさえできれば能力値を知ることができる!
破砕を使おうとすると距離が遠すぎるため使用不可というメッセージが表示されるが、能力を確かめる分には何の問題もなかった。
[ブリジト・バウトール]
[年齢:54]
[武力:93]
[知力:69]
[指揮:98]
強いカリスマ性と強圧的な指揮からなる98の指揮力。
魅力と親和力で兵士たちを従わせるユラシアとは正反対だ。
武力も高い。
だが、武力数値をもう一段階上げた俺には十分戦える数値。
問題はむしろ彼の隣にいる男だった。
[ポホリゼン]
[年齢:29]
[武力:95]
[知力:4]
[指揮:5]
エランテよりも大きな体に赤髪。まるで獣のようなそんな感じだった。
知力と指揮は子供よりひどい。
能力値から推測すると、そんなわけで王の護衛として使っているのではないだろうか。
だから、問題となるのは城に近づいてくる痩せ型の男。
彼だけだった。
ブリジトの王が落ち着きを取り戻した理由もまさにこの男の存在にあるのだろう。
[カテキン・ガネイフ]
[年齢:45]
[武力:98]
[知力:40]
[指揮:74]
快剣という称号があるだけに、その武力は異常に高かった。
さすが、ユラシアが三剣士の中で一番強いと評した人物なだけあるというか。
武力98ら。
マナスキルを使えば完全にA級を越える。
今回の籠城戦で一番問題となる存在であることは間違いなかった。
そのガネイフが梯子を上り始める。バウトールの作戦は、彼が城郭に上って混乱状態を作ることで他の兵士を合流しやすくするものだろう。
見え透いているが、それを実行する人物がこれだけ強いとなれば厄介な作戦だった。
「あの沸騰した油を注いで石を投げ落とすのだ!」
俺の目配せを受けてフィハトリが兵士たちに命令を出した。
「エルヒン! あの者こそが快剣と呼ばれるガネイフだわ!」
ユラシアはそのように叫んでロッセードを取り直した。
結局、今回の戦いはガネイフを阻止できるかどうかで勝負が決まる。
これについては俺もまったく確信が持てなかった。
能力値を確認したところ予想を上回る強さだったから。
それでも戦わないわけにはいかなかった。必ず超えなければいけない山だったから!
沸騰した熱々の油。
それを浴びるつもりはないのか、ガネイフは剣を城壁の隙間に突き刺すと、その剣を通じてマナを放出し強い反動力を作って空に舞い上がった。城郭のはるか上に。しかし、その状態では重力に負けて地面に落ちるだけ。人間は鳥ではないため城内に狙いを定めて思うように着地することは不可能だった。すると、ガネイフは空中で剣を振り回してマナを放出した。剣から出る強力なマナの爆風を推進力にして方向を調節し城郭の上に着地したのだ。
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