第104話 決勝前の西城高校

 朝、目覚まし時計で目が覚めた。

 俺は腕や足、体の動きを確認する。


 うん、体調は万全だな。


 今日は甲子園予選の決勝戦だ。


 勝てば甲子園、負ければ終わる。

 予選を勝ち上がった1校しか甲子園に出場できない。


 今日負けてしまうと予選1回戦で負けるのと変わらないと思うんだ。

 甲子園に行けないという結果は同じだから……



「母さん。おはよう」


「おはよう。起きるのが早かったね」


 俺は着替えてリビングに来ていた。


「9時に学校に集合だからね。校長からも話があるみたい」


「試合は13時からだったよね? 母さん達は12時に球場で集合してるから」


 そういえば、保護者にも学校から連絡があったって言ってたな。


「野球部の父母会だったよね?」


「そうよ。田辺さんの手伝いをしてるのよ」


 野球部の父母会の取り纏めは主将の保護者が担当らしい。


 陽一郎の両親も、まさか1年生の秋に主将になるとは思ってなかったんだろう。

 2年間も取り纏めは大変という事で、中学のシニアで面識があった母さんや、琢磨と山崎兄弟の両親も手伝っていると聞いていたんだ。


「明日からも大変だと思うけど頼むよ」


「明日からも……ね……そうなる事を願ってるから頑張りなさいよ」


「ああ」


 仕事があって忙しいのに俺達の事までやってくれてるんだ。

 父母会の人達も甲子園に連れて行ってあげたいと思っている。



 そして陽一郎が迎えに来て家を出た。


「久し振りだよな。5人で学校に行くのは」


「そうだな。健太も来れば良かったのに」


「俺達に気を利かせたみたいだぞ」


 琢磨が昨日の帰りに「決勝戦やし久し振りに全員で学校に行こうや」と言って一緒に行く事になった。


 琢磨の気持ちも分かる。

 俺達は甲子園に一緒に甲子園に行きたいと思って同じ高校に進学したんだ。


 今日それが叶うかもしれないから。


「そうか。でも、健太が入って良かったよ」


「今では西城の4番だからな。高校野球のレベルに慣れるのが早かったと思うよ。寛人のバッティングピッチャーのおかげだけどな」


「健太には誰よりも投げてやったからな」



 俺と陽一郎が西城駅に着くと、既に3人が待っていた。


「2人共、遅いぞー!」


「琢磨が早すぎるんだよー」


「何で8時に着いてるのさ!」


 俺達は遅くない、どちらかというと待ち合わせより早く着いている。

 琢磨は9時に学校に集合なのに、8時前に西城駅に着いていたらしい。


「楽しみで早く目が覚めたんや!」


「そうだな、俺も楽しみだ。琢磨の活躍に期待してるよ」


「任せろや! 明日こそ新聞に載るでー!」


「「僕達も活躍するよー!」」


 駅からの通学路では色々な人から声をかけられた。


 西城駅周辺は凄く盛り上がっている。


 決勝戦に出る2校の最寄駅は西城駅だ。

 地域住民もどちらを応援するかで分かれているらしい。

 ただ、西城高校の応援の方が少し多いと聞いている。

 西城高校は公立だから、生徒が県内の住民しか居ないからだろうな。



 学校に着くと応援団や吹奏楽部が練習していた。

 応援団の人数が昨日より増えてるな……


「野球部の5人組が来たぞ!」


「俺達も応援の練習をしてるんだ、甲子園でも応援させてくれよ!」


「吉住くーん! 頑張ってー!」


 野球部の5人組って呼ばれてたのか? 初めて知ったよ。

 1年生の時からレギュラーだったし、目立ってたのかもな。


「俺も頑張るでー!」


「坂本くんは調子に乗りすぎないでねー! 恥ずかしいから!」


「俺は恥ずかしくないわ!」


 俺も琢磨のキャラが甲子園で目立つと恥ずかしいよ。


 琢磨は中学入学時に大阪から引っ越して来たんだよな?

 大阪の高校って琢磨みたいな人がいっぱい居るのかな……


「琢磨。大阪って琢磨だらけなのか?」


「はぁ? 何や、琢磨だらけって?」


「大阪の高校って琢磨みたいな人がいっぱい居るのかと思って」


「そんなわけあるかい! 俺は1人や! 俺みたいなのは他には居らんわ!」


 甲子園で大阪代表と対戦しても琢磨だらけでは無いみたいで安心した。


 そうだよな、琢磨の両親も兄妹も普通の人だった。



 9時になり部室に全員が集まった。


 部室では校長からの言葉があり、監督が続き陽一郎も言葉をかけている。


「初の決勝だし応援も凄いから緊張してると思う。だけど、ここまで来たんだ。絶対に勝とう」


 嫌だと言っていた主将だけど、やっぱり陽一郎が主将で良かったと思う。

 投手の俺には主将は無理だよ。


 陽一郎の言葉に全員が応えていた。


「それじゃあ、出発するぞ」



 試合開始の2時間前に球場へ着いた。


 12時に球場入りするから、今の間に走り込みやストレッチをしている。

 準備が終わった頃、俺は相澤さんの所へ向かった。


 俺達がストレッチを始めた頃、相澤さんと西川さんの姿があったんだ。

 決勝前の雰囲気を感じたのか、2人は遠くから見ているだけで俺達の所へは来なかった。


「吉住くん、私達に気付いてたんだね」


「気付いてたよ。試合は13時からだけど来るのが早かったんだね」


「うん。試合前に会えたら良いなと思ってたから……」


 俺に会いに早く来たのか……

 この言葉だけでも嬉しいな。


「ねえ、田辺くんは? 何で田辺くんは来てくれないの?」


 相澤さんの横で大人しくしていた西川さんから話しかけられた。


「陽一郎は主将だから決勝前で色々あるんだよ」


「ふーん。分かったわよ……」


「綾ちゃん、試合前だから無理を言ったら駄目だよ。私達は行くね……試合、頑張ってね」


「ああ、頑張るよ。それと……昨日も伝えたけど、試合が終わったら話があるから……」


「うん……私も話したい事があるの……」


 昨日も俺に話があるって言ってたな。

 明日は朝9時の飛行機だと聞いていたし、留学の事かな……


「なんなのよ! アンタ達だけ! もういい! 田辺くーん!」


「綾ちゃん、駄目だって……もう行くよ」


 西川さんは相澤さんに連れられて球場に入っていった。


 俺達もそろそろ球場入りの時間だな。



 球場に入ると応援の人達がスタンドを埋め尽くしていた。


 西城高校は一塁側で、東光大学附属は三塁側だ。

 山田さんが席を取っていると聞いていたけど、3人の姿が三塁側スタンドの最前列に見えた。


「スタンドが凄いな。これが決勝か……」


 陽一郎がスタンドを見て驚いていた。


「今年は東光にも応援は負けていないからな。陽一郎……西川さんが手を振ってるぞ」


 さっき3人の姿を見た時に知ったんだ。

 西川さんが、さっきから陽一郎に向かってブンブンと手を振ってる事に……


「最前列に座ってるから俺も知ってたよ……試合前だからいいんだ……俺は見なかった事にするから……」


「そうか、悪かった」


 その気持ちは分かるよ。

 あの振り方はこっちが恥ずかしくなる。



 そして、西城高校と東光大学附属の決勝戦が始まった。



────────────────────

ここ数日…

スポ根しか書いてないのは気のせいかな?

うん。たぶん気のせいだね。

ちなみに何とか書けました(*T^T)

あと、大阪をディスった訳ではありません。

私は大阪人なんです(ノ^∇^)ノ

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