第93話 遥香の修学旅行②

 私は『出逢う輪』という御守りを買って2人の元へと戻った。


「えっ? 遥香も私と同じ御守りを買ったの?」


 優衣ちゃんが驚いている。

 そっか、優衣ちゃんは寛人くんの事を知らなかったんだ。


 綾ちゃんには中学の時に教えてたけど、優衣ちゃんは高校から同じ学校になった。


 高校に入ってから寛人くんの話をしなかったから、優衣ちゃんは知らないと思う。


 私は優衣ちゃんに寛人くんの事を話した。


「──それで御守りを買ったんだよ」


「そんな事があったんだ……遥香が普通に話せる男の子は吉住くんが2人目なんだね」


「うん。そうだね」


「中学の時にも聞いてたけど、どんな人か会ってみたいわー!」


「私も気になる! その人を見たいなー。ねえねえ! どんな人だったの?」


 綾ちゃんは前から寛人くんを見たいって言ってたけど、優衣ちゃんもなんだ……


 寛人くんがどんな人か……?


「えっと……背は低かったよ、クラスで一番小さかったから。幼稚園からクラスが同じで、出席番号も前と後だったよ……いつも私を守ってくれてたんだ……」


「出席番号も前後だったんだ。なんて名字だったの?」


「寛人くんは桜井だよ。桜井寛人くん」


「桜井? それなら遥香と前後にならないよ?」


 優衣ちゃんは私の相澤って名前しか知らないんだった。


「その頃の私は佐藤遥香って名前だったんだよ」


「そうなんだ……なんかごめん……」


 私の事情を察したみたいで、優衣ちゃんが謝ってきた。別に謝らなくていいのに……


「ううん。大丈夫だよ」


「でも、改めて聞くと吉住くんと下の名前が一緒なんだよねー! 下の名前以外は全く違うけど」


 綾ちゃんが笑いながら言っていて、変な空気になった私と優衣ちゃんも一緒に笑っちゃった。


「そうだよね。身長からして違うよね! 吉住くんって180㎝はあるでしょ? 小さい桜井くんと、大きい吉住くんだもんね!」


「ふふふ。全然違うね……でも、私の話は終わりにしようよ? 時間がなくなっちゃうよ? 次の神社に行こうよ」


「そうだった! 次は田辺くんとの事を願いに行くんだった! 2人共、早く行くよ!」


 また綾ちゃんは先に行っちゃった。

 私と優衣ちゃんは2人で笑いながら追いかけたんだ。



 そして次の神社に到着し、私達は1本? 2本? の木を見ている。


「2本の木が1本に繋がってるー!」


「うん。不思議だよね」


 私と綾ちゃんが木を見ていると、優衣ちゃんが看板の説明を読んでくれた。


「えっと……連理の賢木って名前なんだ。縁結びのご利益があるみたいよ? 京の七不思議の1つだって」


 私達は下鴨神社に来ている。


 私が恋愛成就で真っ先に行こうと決めていた神社。


 京都には恋愛成就の神社は色々あったけど、何故かこの神社に惹かれたんだ。


「田辺くんが私を好きになってくれますよーに!」


 綾ちゃんは早速お詣りをしている。

 私達が居るのに隠す気がなくなったのか、田辺くん、田辺くんって名前を何回も言っていた。


「綾ちゃんは田辺くんが好きなんだよね? いつも田辺くんと何をしてるの?」


「綾……いつもと同じ様に迫ってるんじゃないよね?」


 綾ちゃんはお詣りを終えて振り返った。


「いつもと同じだけど? 田辺くんは私が田辺くんを好きだって知ってるよ? 好きだって言ってるから」


 綾ちゃん……私達に「何を当たり前の事を言ってるの?」って感じだけど、凄いな……堂々としてる。


 綾ちゃんが羨ましいな……


 私は好きだって言えてないもん……


「綾……アンタ……田辺くんに何て言ったの?」


 優衣ちゃんもビックリしてる……


「普通に好きって言っただけだよ?」


「えっ? じゃあOKを貰ってたの?」


「ううん。『そんな感情はない』って言われた」


 綾ちゃん……それなのに田辺くんと居てるんだ……凄いな……


 私は吉住くんにそんな事を言われたら……


「振られてたの? でも、いつも一緒に居るよね? 何があったの?」


「何て言ったっけ? 思い出した『彼女居ないんでしょ? 嫌ってもないんでしょ? 側に居たら好きになるかもしれないじゃん!』って言った」


「綾……凄いね……まぁ頑張りなよ」


「こんなの振られたうちに入らないから!」


 綾ちゃんはケラケラと笑っていたけど、急に真面目な顔をして私を見て言ったんだ。


「それで、遥香は言わないの?」


「えっ? 私? うん……」


「遥香は早く言った方が良いと思うよ」


 好きって言った方が良い?

 私だって言いたいよ……


「そうだねー! 吉住くんと遥香を見てるとお似合いだもんねー。私も言った方が良いと思うな」


 優衣ちゃんまで……

 そうなのかな……


「上手くいくと思う? 吉住くん……私の事を好きになってくれるかな?」


 綾ちゃんと優衣ちゃんは顔を見合せて笑い出した。


 本気で言ってるのに、なんで笑うの?


 私は少し悲しかった……


「ごめん! そんな顔をしないの。私達は上手くいくと思ってるから笑ったんだよ」


「そうそう! 絶対に大丈夫だって!」


「本当にそう思う?」


「アンタ達を見てたら誰だって思うよ。遥香は吉住くんを誰かに取られても良いの?」


 吉住くんが他の女の子と一緒に居る?

 

 そんなの嫌だよ……


 私が隣に居たいよ……

 


「嫌だ……絶対に嫌だよ……」


「じゃあ何が言いたいか分かるよね?」


 綾ちゃんと優衣ちゃんは笑顔だった。


「うん。言う……私は吉住くんに好きだって言うよ」


 でも、いつ言えば良いんだろう……

 もう予選も始まるし……


「だけど、修学旅行から帰ってすぐは言えないよ。予選があるもん……私が言って予選に何かあったら嫌だもん……だから予選が終わったら言うよ」


 2人は大丈夫だって言うけど、私は自信がない。

 振られたとしても綾ちゃんみたいに諦めなければ良いんだ……


 好きになって貰えるまで頑張るよ。


「その辺はやっぱり遥香だね」


「遥香は優しいからね。いつも相手を優先するんだから。言う時は教えてね」


「うん、分かったよ。そうだ……絵馬も書くんでしょ? 行こうよ」



 私達は絵馬を買って願いを書いた。


「書けたー!」


 綾ちゃんが一番に書けたみたい。

 田辺くんと両想いになれますようにって書いてる。綾ちゃん可愛いな……


「私も書けたよ」


「えーっと……『吉住くんが私を好きになってくれますように』か。それで優衣も書けた?」


「書けたよー『素敵な彼氏が欲しい』って書いた!」


「優衣ちゃん……その下は?」


 私は驚いて見てて、綾ちゃんは笑っていた。お願い事の下に「坂本くん以外でお願いします」って書いてるもん。

 坂本くんって、タコ焼きの人だよね?


「えっ? そのまんまだよ? 悪い人じゃないけど、女なら誰だって良いの? って思っちゃうし、だから無理!」


 優衣ちゃんも笑っていた。

 吉住くんは良い奴だって言ってたんだけどな……違うのかな?


 そして私達は絵馬を奉納した。



────────────────────

下鴨神社の理由は…

私が行った事のある神社だからですね。

何をお願いに行ったのかは内緒です( *´艸)


琢磨くんも幸せになると思います。

たぶん…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る