第94話 遥香の修学旅行③
「奉納も終わったし、御守りを買いに行こうよ!」
「御守りは私も買うー。遥香も早くー」
「うん。すぐに行くから先に行ってて」
綾ちゃんと優衣ちゃんは御守りを見て楽しそうにしている。
私は絵馬にもう一度お願いをしてから2人の所へ向かった。
「お待たせ。可愛い御守りはあった?」
「うん! 私達はピンク色にしたよ」
色々な御守りがあったけど、2人は同じ色か……私はどうしようかな?
「あっ! 小さい絵馬の付いた御守りもあるよ? ピンク色の御守りと両方買おうかな」
「遥香は2個も買うの?」
「うん、ピンク色の御守りは普段持ってて、絵馬の御守りは家に置いておくんだよ」
絵馬の御守りは鈴が付いてるから普段持ち歩くと音が鳴るからね。
だから、誕生日に貰ったハーバリウムと一緒に置いておこうと思ってるんだ。
「私も2個買う! 遥香とお揃いにしよー」
「じゃあ、私もー!」
「ふふふ。うん、皆でお揃いだね」
私達は御守りも買ったし、行こうと思っていた神社は全て行けた。
「遥香! 綾! 次はお団子に行くよ」
「下鴨神社って、みたらし団子の発祥地って書いてたね」
「そうそう! 近くにお店があるんだって」
私達は優衣ちゃんに連れられてお団子屋さんに向かった。
ずっと行きたいって言ってたもんね。
「近所で見る団子とは違うよね」
「うん、違う」
「そうだね。なんで4つと1つに分かれてるんだろうね?」
みたらし団子を注文したんだけど、1つの串に5つ付いてたけど、何故か1つだけ隙間が空いている。
なんでだろう? って言っていると店員さんが教えてくれた。
「後醍醐天皇が参詣の時、御手洗池で水を掬おうとしたら泡が1つ浮かんで、少し経ってから4つの泡が立て続けに浮かんだらしいです。それを人の5体に見立て、人形を模して作られたのが、みたらし団子だといわれているんですよ」
「へー。そうなんだー」
「そんな昔だったんだねー」
「教えてくれて、ありがとうございます」
店員さんは「ごゆっくり」と笑顔で戻っていった。
「うーん! 美味しいー! 私は団子が食べたかったんだよ」
優衣ちゃんが真っ先に食べている。
私も手に取って食べた。
「美味しいね。これで満腹になっちゃうね」
「まだ私は食べれるよ!」
「私もー!」
この後も私達は優衣ちゃんが行きたがっていたお店に食べ歩きした。
どのお店も美味しくて、いつか吉住くんと来れたら良いなって思ってしまうよ。
御守りのご利益があれば良いな。
自由時間も終わり、宿に戻った。
寝る時も綾ちゃんと一緒で、他に3人クラスの子が同室の5人部屋だった。
残念なのは、優衣ちゃんは違うクラスだから一緒の部屋にはなれなかったんだ。
「明日は帰るのかー。早いなー」
「うん、そうだね」
私は御守りを渡したいから早く帰りたい。
だけど、綾ちゃんは遊び足りなかったみたいだね。
「西川さんと相澤さんは何処に行ってたの?」
「私達は神社だよ。恋愛成就のお願いに行ったの!」
同室の女の子が聞いてきて、綾ちゃんが答えていた。
「えっ? 相澤さんも恋愛成就なの?」
「うん。そうだよ」
別に驚く事じゃないと思うんだけどな?
「付き合ってるんじゃないかったの? 学園祭の時に噂になってたよね?」
「あー。まだ遥香達は付き合ってないんだよ……だけど黙っててくれるかな? 彼氏が居るって広まってから遥香に寄ってくる男が減ったから」
「はいはい。なるほどね……理由は分かったよ。相澤さん大変だったもんね」
「だから内緒ね!」
綾ちゃんが話を進めてくれていた。
そっか……吉住くんと付き合ってる事になってるんだった……
学園祭の時に綾ちゃんが吉住くんに事情を説明してくれてたんだよね。
「ねえねえ。相澤さんは西城の吉住くんが好きなの? それくらい教えてよ」
「えっと……うん……」
急に好きなのって言われると恥ずかしかった。また顔が赤くなってるかも……
「そっか、頑張ってね」
「うん。ありがとう」
そうだね、頑張らないと……
まず、御守りを渡して……予選の応援に行って……それで予選が終わったら……
吉住くんに好きだよって言うんだ。
そして修学旅行が終わって家に帰ってきた。
「お母さん、お婆ちゃん、ただいま」
「遥香ちゃん、おかえり」
「遥香、修学旅行は楽しかったの?」
「うん、楽しかったよ。お爺ちゃんはまだ仕事?」
お爺ちゃんは小さいけど会社を経営してるから毎日帰りが遅いんだ。
今日はお母さんが手伝い終わったと言っていて、いつもより帰りが早かった。
「良かったね。自由行動って何処に行ったの?」
私は白峯神宮に下鴨神社と、食べ歩きの事を話した。
お婆ちゃんは何か分かったみたいで、ニヤニヤしている。
お婆ちゃん、変な事を言わないでね。
「下鴨神社って恋愛成就の神社だよね? えっ? 遥香……そうなの? お母さんは何も聞いてなかったんだけど……」
「えっとね……そうだよ」
うん。教えてないもん。
お婆ちゃんは病院で吉住くんを知ってるから良いけど、お母さんには内緒だった。
だって、お母さんに好きな人が居るって言うのは恥ずかしいよ。
それにお母さんは私の性格を知ってるから心配すると思うし……
「その人は大丈夫なの? 変な人じゃない?」
ほら……やっぱり……
なんて言ったら良いんだろう……
「吉住くんは大丈夫だよ。私は何回も会ってるから良く知ってるよ」
助けてくれたのはお婆ちゃんだった。
「お母さんは知ってるの? どうして?」
「去年の夏に入院した時に同室だったんだよ。遥香ちゃん達はその時に知り合ったんだ……そうだよね? 遥香ちゃん?」
「うん、そうだよ。それから何回も会ってるよ」
「この前はおんぶして家に送ってもらってたよね」
お婆ちゃん、なんで全部言うのかな。
なんか楽しそうに言ってるし、お母さんは「それ何! おんぶ?」って言ってるし。
私とお婆ちゃんはお母さんに全て話した。
「──吉住寛人くんか……寛人くん……下の名前が一緒なんだ……」
「うん。一緒だね」
お母さんは寛人くんと連絡が取れなかった事に責任を感じてたんだ。
これも言えなかった理由だった。
下の名前が一緒だから……
「名前が一緒だから好きになった訳じゃないんでしょ?」
「違うよ。気付いたら好きになってたんだ……名前が一緒なのは偶然だよ」
「遥香が私に言えなかった理由……何となく分かったわよ。今度はお母さんにも吉住くんに会わせてね」
会わせてって……どうやって?
付き合わないと家なんて無理だよ……
「また機会があったらね。それじゃ荷物を片付けてくるよ」
私は自分の部屋に逃げ込んだ。
そして、机の引き出しから吉住くんと写した写真を飾った。
見られたら恥ずかしいから、部屋に居る時しか飾ってないんだ。
絵馬の御守りは吉住くんから貰ったハーバリウムと一緒に飾り、出逢う輪の御守りは寛人くんから貰ったヘアバンドと一緒に飾った。
縁結びの御守りは学校の鞄に付けると、クマのキーホルダーと仲良く一緒に並んでいる。
そして私はスマホを取り出して、吉住くんに連絡をした。
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