第61話 クリスマスパーティー

 今日のクリスマスパーティは12時から開始で、俺は陽一郎と一緒に向かっていた。


 山田さんの両親の店は西城駅から続く商店街の中にあり、パーティーが決まってから店の地図が添付されていた。


「陽一郎は何を買ったんだ?」


「ボールペンにしたよ。プレゼント交換は楽しそうだけど、男女のどっちに渡るか分からんから、何にしたら良いのか分からなくてな……寛人は何にしたんだ?」


「俺は写真立てだよ。陽一郎と一緒だよ、何にしたら良いのか分からなかった。でもクリスマスパーティーか、こんなの初めてだよな」


 小学校の頃は友達の家でクリスマス会とかあったが、パーティーと呼べるものではないし、中学になってからは野球の練習後に爺ちゃんがケーキを用意していて、皆で食べたんだ……それくらいしかなかった。


 地図を確認していたら、もう着く頃だった。


「この辺だよな? あっ! あそこじゃないか?」


 店が見えてきて、中には琢磨と翔や翼の姿が見えた。扉を開けて俺達も中に入った。


「あっ! 田辺くんと吉住くん、いらっしゃい、今日はありがとー」


「俺達の方こそ、ありがとう。でも本当に良いのか? 値段が安すぎないか?」


 俺はオシャレな店内と、用意されているケーキと料理を眺めながら言っていた。1人1000円って聞いてたけど、ここまでの料理とは思っていなかった。


「前も言ったけど急なキャンセルで、キャンセル料も貰ってるから大丈夫みたいよ? でも、この料理が余っちゃったら勿体ないでしょ?」


「それなら良いんだけど、予想以上だったからさ」


 ケーキやチキン、他にはオードブルがテーブルの上に乗せられていた。本当に美味しそうだ。


 山田さんと話していると、和也と奥村も到着し、相澤さんと西川さんは買い出しから帰ってきて、荷物を山田さんの両親に渡していた。


「全員揃ったねー。じゃあ始めようか!」


 山田さんの掛け声でパーティーが始まった。


「待ってたで! お腹空いて我慢してたんや!」


 山田さんの声に琢磨が反応し、翔と翼は和也と一緒に料理を見ていた。


「久し振りだな。足はどうなんだ?」


「奥村か、久し振りだな。もう練習に参加してるから大丈夫だよ。それより選抜出場おめでとう」


「ああ、甲子園を楽しんでくるよ。これから何回も行く予定だからな」


「俺達に勝ってから言えよ。来年の夏には西城が甲子園に行くから」


 出場が決まった選抜はともかく、それ以降もだと? 奥村……俺の前でふざけた事を言ってくれる……絶対に俺達が勝つからな。


「はーい! そこまでー! 何やってんのよ? 今日は野球の事は忘れて楽しんでよね。クリスマスパーティーなんだから」


 西川さんだった。俺達を止めに来たと思ったけど、違ったみたいだ……気付いた時には陽一郎が連行されて行った……


 いつの間にか奥村もテーブルで料理を選んでいた。俺もまだ何も食べてなかったな……出遅れたけど、皆が楽しそうにしているのを見ているのも良いな。


「吉住くんは食べないの? 美味しいよ」


「食べるよ。そうだ、相澤さん……今日って西川さんと山田さんって予定があるって言ってなかった?」


「綾ちゃんと優衣ちゃん? 何の事かな?」


「ほら、クリスマス花火の話だよ。西川さんと山田さんが予定があって一緒に行けないって言ってたでしょ?」


「あっ! そ……そうなんだよ! 綾ちゃんと優衣ちゃん、予定があって行けないって言ってたんだよ。本当なんだよ?」


 相澤さんの雰囲気が変わった。こんな早口な相澤さん……初めて見た気がする。


「遥香、私がどうしたの? 呼んだ?」


「優衣ちゃん……何でもないよ。ほらっ! 早く料理を取りに行こうよ」


 相澤さんは山田さんを料理の乗ったテーブルまで手を引っ張って行った。


 何だったんだ? 分からないけど、俺もお腹が空いたから食べよう。クリスマスパーティーってこんな感じなのかな? 皆、凄い勢いで食ってるだけじゃないか……俺は何も食べてないし……


 ケーキを食べて、料理も色々とあったので、少しずつ全部食べてみた。


 陽一郎は西川さんに捕まってるから話せない。

 相澤さんとも、さっき話をしてから会話がなかった。山田さんの横にずっと居るから邪魔になりそうな気もするしな。


 その後、陽一郎以外の男達と話をしたり料理を食べたりした。


「そろそろプレゼント交換しようや!」


「そうだよー! やろーよ!」


 琢磨は食べる事に満足して我慢ができなくなったみたいだった。


「そうだねー。時間も経ったしやろっか! クジ引きだからね。何が当たっても文句はなしだよー」


 プレゼント交換も山田さんが準備してくれていたみたいだ。山田さん……クジも作ってたりマメに色々とやってくれてて感謝だな。


 クジ引きの紙を選んで、中に書いている番号のプレゼントを貰えるみたいだ。

 その番号が自分の持ってきたプレゼントなら、クジ引きのやり直しになる。

 クジを引く順場はジャンケンだった。


「ボールペンなんて誰や! 俺に勉強しろって言ってんのか!」


 琢磨はボールペンを引いて文句を言っていた。勉強しろよ……期末試験の事を完全に忘れてるよな。


「寛人は何やったんや?」


「今から開けてみるよ。入浴剤だな。ボールペンで文句を言ってたけど、琢磨は何を買ったんだ?」


「タコ焼きスナックや! めっちゃ美味しいねん」


 聞いたら、1500円の全てをタコ焼きスナックに使ったらしい。それは和也に当たったみたいだ。


 1個50円の駄菓子が1500円分……30個も入った一番大きい袋を持っていた。

 和也は「何で全部同じなんだ」と琢磨に言い寄っていた。その気持ちは分かる……


 俺に当たらなくて良かった、あんな袋を持ってクリスマス花火には行きたくないからな……


 プレゼント交換も終わって、料理も全て無くなり、クリスマスパーティーが終了した。


「遊びに行くでー!」


「うん。行くよー!」


 和也と奥村も遊びに行くみたいだ。

 西川さんと陽一郎は終わったら居なくなっていた。もう慣れたので、詳しくは聞かない事にする。


 そして相澤さんからメッセージが入った。


『お店の片付けを手伝ってから行くね。先に西城駅の北口で待ってて貰ってもいいかな?』


 西城駅の北口は、この店からだと反対側の出口だから皆に見付からないと思う。


「俺は家で予定があるから帰るよ」


 翔と翼が「遊びに行こうよー」と何度も言ってきたが、何とか断って北口に着いて相澤さんを待っていた。


 そして片付けを終えて、遅れて店を出た相澤さんの姿が見えてきた。

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