第15話 退院の日
今日はやっと退院の日だ。高校1年の夏を病室で過ごすとは思わなかった。秋の大会は皆に頑張ってもらうしかないな……リハビリもあるし、来年の春の大会を練習台にして、夏に照準を合わせていこう。
荷物を纏めながら、そんな退院後の事を事を考えていた時。
「おはようございまーす♪」
相澤さんは良い事でもあったのか、機嫌が良さそうに、ニコニコしながら入って来てお婆さんが答えていた。
「あれ? 遥香ちゃん、今日は来る日じゃなかったんじゃないの?」
「うん。お婆ちゃん、今日は違うよ」
「じゃあ今日はどうしたの?」
「今日は……あっ……吉住さん……いた。間に合って良かった」
どうしたんだろ? 俺に用事があったみたいだ。俺は疑問に思いながら答えた。
「相澤さん、おはようございます。どうされました? 俺に用事でしたか?」
「はい。吉住さん、今日が退院と伺ってたので……これ、良かったら家で食べてください」
「えっ? はい……ありがとうございま……す?」
何か分からないけど、とりあえず受け取った。
「あっ……退院祝いですよ。それに誕生日を病院で過ごすって伺ってたので、そのお祝いの分もです!」
手渡されたのはケーキだった。とりあえず俺は受け取った。
「あ……えっと……気にしないでくださいね。もうすぐお婆ちゃんも退院するし、退院祝い用のケーキを練習をしてたのでっ!」
「そうなんですね。では、帰ってから頂きます。ありがとうございました。今年は誕生日のケーキがあると思って無かったので凄く嬉しいですよ」
ビックリしたけど、練習用という事で納得した。まぁ……わざわざ作るなんて事、あるわけないもんな……俺は納得して受け取った。
「じゃあ、私は買物があるから帰りますね。お婆ちゃん、何か欲しい物ある?」
「遥香ちゃん……何もないよ……」
どうしたんだろう……また相澤さんのお婆さんの様子がおかしい。
「分かった。吉住さん、私はこれで失礼しますね。お大事にしてください」
「ええ、ケーキもありがとうございました。また何処かで会う事があれば宜しくお願いします。相澤さんもお元気で」
そのまま相澤さんは帰って行った。後は両親と一緒に斎藤さんとロビーで待ち合わせの予定だった。
『じーーーっ』
何だ? また視線を感じる。
「あの……相澤さん、どうかされましたか?」
「あんた達……やっぱり仲が良かったんだね……遥香ちゃんの誕生日は10月だよ」
相澤さんは何を勘違いしてるんだろう。確かに話しやすくて良い子だけど、連絡先なんか聞いてないし、学校だって知らないんだぞ? ケーキだって……恐らく泣き顔を見たお詫びって感じだろ?
そのまま何故か俺は相澤さんの玩具にされていた。そして両親の迎えが来た。
「相澤さん。俺はこれで行きますね。お世話になりました」
「吉住くんも元気でね。私ももうすぐ退院だから、それまでの我慢だよ。遥香ちゃんと仲良くしてあげてね」
退院手続きは透さんが済ませてくれてたので、俺達はロビーに向かい、既に待っているであろう斎藤さん親子の所に向かった。
「斎藤さん! お待たせしました」
「無事に退院出来て良かったよ。親は向こうに居るから呼んで来るわ」
斎藤さんが親を連れて戻って来た。
「吉住くん、お待た…『あれっ?桜井さんのお宅の真理さん!?』……せ……はいっ?」
斎藤さんの母親が、俺の母さんの顔を見て、斎藤さんに被せて驚いた声をあげていた。
母さんを「桜井さん」と呼んで……
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