第9話 ふたつの剣の威力

組長「なんの用なんだ?」

妖怪退治のスーパーヒーローが、暴力団ごときに。

犬坂『人探しで』

犬神「人探し」

組長「あほか、始めからそう言えばいいものを、不法侵入だろうが」

只の人探し、組長の緊張が緩んだように見える。

不法侵入で警察を呼べば、逆に赤ちゃん人質はやめることになる。

いっそ犬士自ら通報するか?

いや、しかし組長に後ろめたい事が他にも有った場合、赤ちゃんの身が更に危うくなる。

不法侵入した側が通報すると言う自演行為ははめられたと逆上される恐れがある。

組長「で、誰を探してる?」

犬坂『山田A太郎』

犬神「山田A太郎」

組長「、、しらん、聞いた事もない」

犬坂『では帰ると』

犬神「なら帰る」

里見とヤクザ達が三階に戻って来た。

全員無事、だがしかし。

組長「待たんかい、不法侵入の落とし前はぁ?」

組長として当然の要求である。

警察は呼ばないつもりらしい。

これでは通報しても自演である、下手に刺激を与える方が不味い。

あえて要求に従う。

犬坂『剛力の木刀を。組員に渡して、殴らせて、威力を見せて』

犬神「その木刀はすごい威力がある、試して見ろ」

そう言って、自分に打ち込む様にジェスチャーした。

組員が木刀を拾い、野球バットの様に素振りする。

里見は犬神の後ろ3m程に離れて立って、受け止める姿勢になった。

組員は犬神と頷き合うと胴目掛けて木刀を振り抜いた。

犬神は自分で飛んだとは思えない体勢と速度で吹き飛ぶ。それはとても後方の里見一人で受け止められない威力にも見えた。

しかし里見は犬神を遠慮無くタックルするようにして受け止めきった。

組長「ふーん、他には?」

犬坂『もう無いです、警察を呼ぶんなら呼ばせて』

犬神「もう無い、警察を呼ぶなら呼べ」

組長「そのスマホを置いていけ」

里見の胸のカメラ付きスマホを指差した。

里見がスマホを机に置いた。

"組員の一人がそれを取って組長の元へ向かう"

◼️

これで勝ちが確定した。

組員は組長にスマホを見せる振りをして包丁を奪い取る。赤ちゃんを抱き抱える手も抑えた。

里見が組長制圧に加勢し、母親と犬神が赤ちゃんに駆け寄った。

里見は令和の剣を組員から受け取ると組長を刺す。

組長は良い子になった。

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