第8話 ダークナイツ

甲冑を着た犬神が車から飛び出して里見の後を追う。

玄関ドアに挟まりながらうずくまっている男を屋内に押し戻し、中から鍵を掛けた。

里見は二人目に襲いかかっていた。

犬神は一人目の痛みが収まるのを待って話しかける。

犬神「組長は居るか?」

一人目「居る」

犬神「このカードを一人一枚やる」

名前無しカードの束を渡す。

今回の殴り込みで名前入りカードは組長だけだ。

つまりターゲットは組長一人だけなのだが、里見は全員斬ると言っていた。組長一人だけ良心会に入れても可哀想だから。三階建ての組事務所なら居てもせいぜい十人、十五人位だろうと予測していた。

一人目「加勢しなくていいのか?」

善人化した一人目が訊いた。

犬神「心配はいらん」

犬神の甲冑姿は日本人なら皆知っている。

妖怪退治の超人だ。

それに対して里見のライダースーツ姿の認知度は無い。しかも素顔を見られている。若い女性。

里見『ぅおい、、』

犬坂『落ち着いて下さい』

犬神「?、、今行く」

繋ぎっぱなしの三者通話。

里見の胸にはスマホカメラが固定してある。

犬神は甲冑なのでスマホは懐に、イヤホンだけ装置している。

落ち着け、とは里見に対して言ったのだろう。

犬神は急いで里見の後を追って二階に上がる。

一人目「うちの組長は妖怪だったのか、、」

◼️

二階の組長室、その前の廊下に四人倒れている。

犬神は扉が開きっぱなしの組長室に入った。

しかし誰も居ない。

犬神「三階か?」

犬神の呟きに誰も答えない。

二階が組長室なら三階は組長の自宅だろうか。

嫌な予感がする。ヤクザ相手に妖怪退治のスーパーヒーローが苦戦するはずがないのに。

三階にたどり着いて答えはすぐにわかる。

◼️

組長は赤子を人質に取っていた。

犬坂『早まらないで、ここは取り逃がしてもいいんです』

組長は赤子を抱き、包丁をその喉元にあてがっている。今にも引き裂きそうだ。

母親らしき女は座り込んで泣いている。

赤子はよくみると一才位、抱かれ慣れているのか大人しい。組長の我が子か、組員もしくは堅気の子か。泣いて暴れただけでも首が斬れそうでひやひやする。

犬坂『組長が馬鹿ならいいのですが、私の言う通りにして下さい』

組長「武器を捨てろ」

犬坂『捨てて』

里見が令和の剣を、犬神が木刀を捨てた。

組長「下の者はどうした?」

犬坂『気絶している』

犬神「気絶している」

組長「、、ライダーの奴、下の奴を起こして連れてこい」

甲冑の方が危険と判断し、目が離せない。だからライダーを選んだ。

犬坂『里見ちゃん行って下さい、人数は多い方がいい』

里見が二階に降りると斬った六人が集まっていた。

皆善人になっている。

組長はそれを知らない。

まだチャンスはある。

里見「上で組長が子供を人質に取ってる、あんた達を連れてくるように言われたわ、みんなで行くわよ」

「わかりやした」

犬坂『里見ちゃんヤクザ達には悪人のふりをさせて下さい』

里見「あんた達が良い子になった事、組長は知らないからチャンスが有ったら子供を助けて、私達はどうなってもいいから」

「へい」

トロッコは止まらない。

しかし死の覚悟があるなら選択は簡単だ。

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