第5話 Only to you(5)
「は? 社長と?」
真太郎はネクタイをゆるめながら意外そうに言った。
「そうなの! 美味しかった~。 あたしじゃあとっても行かれへんような料亭でさあ。」
南は料理が非常に美味しかったことよりも、北都にあれだけの言葉をかけてもらったことの方がうれしくてテンションが上がっていた。
「めずらし、」
「ほんまに社長は懐が大きくて、いつまでも若々しくてダンディで。 冷たいようでちゃーんといろんなとこまで見ていてくれはるし・・」
南は夢見るようにそう言うと、
「今さらなに言ってんの?」
真太郎は少しつまらなそうにブスっとして言った。
「あ、妬いてる? ひょっとして!」
南は座っていた真太郎の後ろから抱きついた。
「なに、妬くって、」
「声もしゃべり方も。 ほんっまに優しいトコも。 真太郎にそっくりやなあって。 ほんまに思った、」
南はもうそれがうれしくてたまらない。
「なにソレ・・」
真太郎は少し呆れて笑ってしまった。
「・・だから。 お義父さんのことも真太郎のことも。 大好き、」
いい年して。
平気で言うもんな。
真太郎は自分の首に手をまわした彼女の手をそっと握った。
「なんかもうどうでもよくなってきちゃった・・・」
夏希はぐったりとして言った。
「何言ってんだよ~。 夏希が忙しいってばっかでなかなか決めないから! もっとさあ、どうなの? 女の子ならこういうのがいいとかあるでしょ?」
高宮は若干イラついて言った。
「だってみんなおんなじっぽいし。 たいして変わんないし、」
「絶対に今日決めないと! 間に合わないよ。」
もうすぐに迫った結婚式なのに
なんと夏希はまだウエディングドレスも決めていなかった。
ファッションにまったく疎い彼女はどれを見ても同じように見えてしまい、何度か足を運んだがまったく決められない。
「あ~~、もう。 やっぱり南さんか栗栖さんに一緒に来てもらえばよかった・・」
泣き言をいう夏希に
「またそうやって。 あの二人に頼るんだから。 自分のことくらい自分で決めたら、」
高宮は呆れて言った。
「もう、これでいっか? 隆ちゃんが好きなのでいい。」
肩を出したシンプルだがラインのきれいなドレスを試着した夏希は言った。
隆ちゃんの好きなのでいい・・
少し苛立っていた高宮の心が一気に萎えてしまう。
背が高くて手足が長い彼女は何を着ても似合う!
と、正直思っていて。
「ねー。 いい? これで。」
夏希は座っていた高宮にすがるようにそう言った。
計算してるわけじゃないんだろーけど。
ホント。
いちいち萌えるよな・・。
高宮は照れて、つい綻んでしまいそうな顔を必死に抑えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます