第12話 目的が一致する?
感染者と犯罪者、互いが競争するように、数を増やしていった、ってこと?
なにその未来、怖い……。
わたしの時代がどれだけ平穏なのか、比べて見て分かる……、
「ハドメの時代は嵐の前の静けさだったのですね――それくらい平和でした」
「今の時代も、でも平和なんじゃ――」
「二年後くらいに、いま言ったウイルス感染症が流行しますよ」
それ言っても大丈夫? タイムパラドックスにならない?
「なったらなったで、いいんじゃないですか?
だって、流行しないに越したことはないですから」
というか知らなかったのですか、とシャルちゃん。
「勢いで過去にきちゃったから、下調べは最低限のことだけだったかも」
「そうですか」
あ、いま、呆れられた気がする……。
同志を見つけたと思ったら、
すごく低いレベルのところにいた人だって分かったみたいな表情だった。
……シャルちゃんの期待に応えられなかったみたい……。
「ハドメの目的と私の目的は違うようですね」
「シャルちゃんの目的はなんなの?」
「シャルちゃん?」
「あっ、シャルル、さんの――」
って、なんでわたしが遠慮してるの!? シャルちゃんが年下でしょ!?
でも、警察官だからか、睨まれると萎縮しちゃうんだよね……。
「目的、って、なあに」
「ハジメさんをマグネットに見立て、異能者を引きずり出します」
ん?
「異能者ホイホイの体質を持つハジメさんを使い、異能者を見つけ出し、未来で犯罪に使われているであろう異能の研究を――この時代で情報を集め、持ち帰ります」
んんん!?
「隠す、にしてもまだ脇が甘い異能者たちですから、
情報を集めるならこの時代だと思いました」
「じゃ、じゃあ、シャルちゃんは、はじめのことをなんとも思って――」
「……? もちろん、同居していますから、少なからず好意はありますけど、でも、あくまでも異能犯罪を止めるための道具として利用するため、ですから。他意はありませんよ」
「ふーん」
「……そのニヤニヤはなんですか?」
もやもやが取れてスッキリしたら、顔が緩んでしまった――気を引き締めなくちゃ!
「言っておきますけど、同居していますけど、変なことはしていないですからね?」
「はじめにそんなことをする度胸はないでしょ」
「私が攻めれば意外と落とせそうですけど」
「えっ、じゃあわたしでもいけるかな!?」
「落としたいんですか?」
はじめに勝ちたいのであって、落としたいわけではなかったのだ。
どちらかと言えば蹴落としたいね。
「別に上手くもないですが――」
「それでシャルちゃんはこれからどうするの?」
「……ひとまず、ハジメさんには友達をたくさん作ってもらいたいですね。異能者を引き寄せてくれないと情報を集められませんし……お母様からも頼まれていますから」
そういえば言っていたね、はじめの人格矯正プログラム。
素っ気ない今のはじめを、もっと積極的にさせるために――、そう、わたしの時代にいる、あの迷惑でアグレッシブなイタズラ好きなはじめに……って、あれ!?
シャルちゃんの目的を達成させようとすると、わたしの目的が達成できない……。
はじめが友達を作ったら、わたしの日常が、非日常にされたままで――、
「ハドメも手伝ってくれますよね?」
肩をぽん、と叩かれ……、
「は、はぃい……」
わたしは、そう言うしかなかった。
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