【注10】英雄とは何か
英雄は旅立ち、成し遂げ、帰還する。
有名な言葉です。
神話学者ジョーゼフ・キャンベルの説く神話・英雄伝説の基本構造を表わした言葉ですね。
日本ではベタすぎるのか、あまりキャッチには使われない「ヒロイック・ファンタジー」というジャンルがあります。
このジャンルは、ロバート・E・ハワードが『英雄コナンシリーズ』を著した際に、当時の編集者であったL・スプレイグ・ディ・キャンプが、かつて見たこともないこの前代未聞の小説を表現するために考案したジャンルです。
かつての神話は、その多くが英雄の叙事詩でした。つまり、神話の多くはもともとヒロイック・ファンタジーだったのです。
にもかかわらず、ハワードがコナンを発表する1932年まで、この言葉は世界に存在しませんでした。それだけ、英雄物語はジャンルとして認識する必要がないほど、世界の人々にとって一般的なものだったのかもしれません。
英雄はほとんどの場合、一般の人々に比べて超人的な能力を有していることが多く、類まれな胆力を持っています。
その力を持って、余人にはなしえないような偉業を成し遂げた彼らはやがて王になり、神になり、少なくとも伝説になります。
ですが英雄物語が世の中にあふれかえった結果、彼らの活躍は数あるルーチンの一つに過ぎないものとなります。つまり、受け手が慣れてしまうわけです。
英雄的行為・活躍を皮肉った反ヒロイックファンタジーが現れたり、超人的な活躍であったはずの行為が、一般人によって難なくこなされる展開が起こり、読者もそれを不思議に思わずに受け止めてしまったりします。
稚拙な例ですが、いくつかあげさせてもらうと――
・高い場所(崖・滝)から落ちても死なない
・現実に存在する害獣からの被害は受けない
・時間的制約を受けない
・言語的障害が存在しない
・驚異的な筋力・跳躍力・敏捷性を発揮する(特に害獣や天変地異から逃れる場合)
物語の登場人物だからといって超人的な能力を持つ必要はなく、そこら辺の矛盾に注意して物語を読み進めると一味違った喜びが得られるかもしれません。
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