【注8】復讐劇

 ファンタジーに限ったテーマではありませんね。

 SFやミステリー、怪奇小説にも復讐劇は多く存在しています。


 しかし、ファンタジーには復讐劇が実に多い。大作ファンタジーの中に、復讐の要素がないものを探してくださいと課題を出されたら、ほとんどの方は困ってしまうのではないでしょうか。試しに皆さんの本棚を見渡して、復讐の要素がない作品を探してみてください。


 神話にもギリシャ神話のエリーニュスなど、「復讐の女神」と名の復讐そのものをつかさどる神々が存在します。日本の『古事記』にも復讐の物語がありますね。これは太古の昔から「復讐」が人類にとって大きな比重を持っていたことの証であると考えます。


 人々の一番初めのいさかいは征服欲や貧困からの脱出などからだったかもしれませんが、戦火は怨恨を必ず残し、結果復讐へと人々を駆り立てます。いうまでもなく復讐は更なる復讐を呼び、その連環は歴史が続く限り終わらないのかもしれません。


 『指輪物語』の冥王サウロンは世界を手中にしようと目論んでいますが、その目的の一つは人間に対する復讐心でした。『ドラゴンランス戦記』では、魔法使いレイストリンは若いころにかけられた呪いに対する復讐を、数百年にわたる仕掛けの末に果たします。『英雄コナン』では、コナンは何か国にもわたる追跡の旅の末に仲間たちを殺した異国の王を追い詰め、辺境の地で殺害します。その際に王が放った「四つ裂きにせい!」という台詞がとてもいさぎよくて男らしく、印象に残っています。


 復讐は成し遂げられることが多いですが、その結果は様々です。

 晴れ晴れとした気持ちで大団円を迎える作品もあれば、主人公が生きがいを失ってしまったり、更なる怨恨が続いていくものもあります。

 E・R・エディスンの小説『ウロボロス』はこれぞ英雄譚、というべき骨太のヒロイックファンタジーですが、復讐を果たした英雄たちは物語の最後に、神に意外な願いを乞います。英雄であるが故に抱える矛盾、それと同時に物語の題名を体現する行動です。文庫版は絶版のようですので、古書店で探してみてください。

  

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※この項目は加筆修正する可能性があります。

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