【注4】財宝!
財宝は、物語そのものの最終目標となることが多くみられるように、非常に魅力的な題材です。
海賊が島や海底に隠した金銀宝石や、この世に一つしかない不思議な魔力を持った宝石や冠、または名のある剣や槌など、ある種の人間にとっては価値のある宝も存在します。
人々はそれらの財宝を求めて冒険に繰り出し、時には奪い合ったり殺しあったりします。
『指輪物語』の「一つの指輪」のように、自分の意思をもって周りの人間の欲望を操り、自らの目的に進ませる存在もありますが、多くの場合は人間が持つ素の欲望を掻き立てる物が財宝なのです。
海賊たちにとっては一定の期間の愉悦を自分たちの生活にもたらすためのツールに過ぎなかったりしますが、もっと大きな野望を持つ人間のとっては、自分のステップアップのための糧であったりします。
土地を手に入れるのにも、軍隊をそろえるのにも資金は必要ですよね。
ゲームブック『ソーサリー!』シリーズでは、「諸王の冠」という統治の才能を持ち主にもたらしてくれる魔法の工芸品が登場します。諸国の王たちは数年ごとに冠を順番に所持して自らの王国を豊かにしていくのですが、辺境の魔王にその冠を奪われてしまい、諸国は暗黒期を迎えます。
そこで主人公は王国の名を受け、単身魔王の砦へと冠を奪回するための冒険行へ旅立つことになるのです。
トールキンの『ホビット』では、ドワーフたちが邪悪な竜スマウグに奪われたアーケン石を取り戻すために、はるか遠いはなれ山を目指して旅を続けます。こちらも、アーケン石を奪還すれば自分たちの王国を復興できると信じたドワーフたちの行動です。
このように多くの場合、財宝そのものも大変な魅力のあるものではあるのですが、真の目的はその財宝を手に入れた後の使い道にあるようです。
『英雄コナン』シリーズでは、苦労して手に入れた稀代の宝石と旅の途上で知り合った女性が同時に谷底へ転落する状況になり、コナンが一瞬の迷いもなく女性を助ける場面があります。
コナンの快男児としての魅力を表現する要素の一つとして財宝が使用された興味深い場面です。物語の一篇のほとんどがその財宝をめぐる攻防に費やされたにもかかわらず、読者はあっさりと財宝をあきらめるコナンに非難の感情を抱くことはありません。
物語を彩る種々の財宝、その扱い方に気をつけて読み進んでいくのも、また面白い物語の楽しみ方ができるのではないでしょうか。
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