【注2】小人族はオリジナル

 小人もファンタジー作品にはかかせない要素の一つと言えるでしょう。

 やはり元祖と言えばトールキンの『ホビット』ですね。漠然とした「妖精」と「小人」という意味だった「エルフ」と「ドワーフ」を種族化した点も特筆すべき偉業ですが、「小人族はオリジナル」という概念を新たに生み出した(後続が勝手に引き続いた)ことも注目に値する事柄です。


 おそらくトールキン教授に対するリスペクトとして、後続作家やゲームなどの小人族はオリジナル設定で生み出されていったのだと思われます。

 トールキン教授が単なる「妖精」という意味で使用した「エルフ」という言葉はそのまま種族名という意味合いでスタンダードに使われているのがその証拠でしょう。

 ホビットのような種族を出したいが、その種族のどのような点をホビットと異なるものにするか、というところから考えられている向きもあるところが面白いです。ゲームですが、『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』では、ハーフリングという種族が出てきます。しかしこれは、「矮人」という意味の英単語なので、種族名ではありませんね。その派生世界の『ドラゴンランス』シリーズでは「ケンダー」というオリジナルの種族が登場します。


 たいていの作品では、メインとなる小人族の多くは、善人で心優しく、弱者の心を理解し、普段は臆病ですがここぞという時には芯のある勇気を表します。隠密行動にたけており、人の目を盗んで窃盗や工作などの描写が多いのも特徴です。

 他方、サブとなる小人は「ノーム」や「インプ」などの妖精の名称がそのまま使われ、我々現代人には理解できない気違いじみた表現がなされることが多いですね。つかの間の快楽の方が自分や仲間の命よりも軽く、言動も人を戸惑わせることが多いです。ジョーク要因として作品内に現れることもしばしばで、ホビット的な存在よりも作品内ではぞんざいに扱われています。


 拙著では、「グラッシン」と「ブッシン」という2つの種族を設定しました。これは、イングランドの神話・妖精伝説をもとに作られたであろうトールキン教授の「ホビット」をリスペクトして作られた『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』の「ハーフリング」の模倣である『ソード・ワールドRPG』の小人族、「グラスランナー」のオマージュ種族です。

 ですので、5世代目のパクリ種族と言えるでしょう。大変申し訳ありません。


 グラスランナーも英単語のようです。

 ファンタジーにおける言語の問題と、作品世代の話については、また別項で語りたいと思います。


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※この項目は加筆修正する可能性があります。

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