第四話
「ぼくの石、なんでなにも入ってないの?」
「そ、それはね?エヴァ…あのね」
「あ、ああもしかしたら小さくて見えないだけかもしれない!」
「そっか!」
馬鹿らしい話だ。
たった数年、けど子どもの僕からすれば長い7年だった。10歳の誕生日を迎えた覚えはある。しかし気がつくとこの村の門の前に倒れていた記憶が始まるのだ。
妹が元々居なかったはずの僕はその頃は単純なことで喜んだ。そうでもしなければ自分の名前と歳以外に記憶の無かった日々に耐えられなかっただろうから。
「ねーねー!きみ名前は?」
「ん?ぼくはエヴァンズ!」
「知らない子だぁ!」
そして思い出すこの村唯一の幼馴染のマルチダの記憶、彼女は針の才能を持っていて家族にも愛されていた。それがその頃はただ憧れだった。彼女が僕の石を大人たちに紹介するまでは。
「おばちゃん、エヴァの石綺麗なんだよ~!」
「んぇ?どうしたのマルチダ」
「私エヴァの石が大好きだからいろんな人にも教えてあげようと思って」
「マルチダちゃんは綺麗な物大好きだもんね」
「うん!おばちゃんも私と同じ針だもんね!」
「そうだねぇ、でエヴァ見せておくれ」
その日、僕は村唯一の無能と晒された。
土着の宗教のようなものだが石が透明な物は他者を恨み災厄を起こすと村では信じられていた。
「ごめんなさい!」
「い、いいんだマルチダ。いつかバレてたから」
「そ、それとね、あのね」
「ん?」
「もうお父さんがエヴァとは遊ぶなって」
「そんな、ねぇ」
「ごめんなさい!」
そういって走っていったマルチダの背を想う。
僕に石を投げた大人たちを想う。
「でも、もう無能とは呼ばせない」
父には禁じられていた森入り。今日その禁忌を侵す。そして証明するのだ無能の石でも狩り位できるってことを。
「足跡の群れってことは、ゴブリンだろ」
メリル婆やの話でゴブリンの情報は知ってる。ゴブリンを狩って、僕は無能じゃないことを証明するんだ!
====================================「はぁ、はぁ!なんだよ、なんだよこれ!」
気がついた時、村は燃えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます