お隣さんだったとは…

アパート 徹也部屋

保健室から結衣を迎えにいき、その後ラッシーチームの練習日だったのでそのまま帰宅することになった。

後日、今後の方針について練習しつつ決めていくことになった

まだ引越しのダンボールが開封しきれてない中から、ファイルとUSBメモリーを取り出しPCを立ち上げる


「スズキのアルトの系列…よし、これだ」


スズキ アルトのチューンデータ、一覧を引っ張り出してくる


過去stGTに参加した車両や、雑誌やネットに載っていたの車両の仕様や当時の評価などを確認する

チューンしていくと、現在の商店街チームのアルトと似た仕様になっていくのがアルトワークス

中にはセオリーを無視した面白い仕様もあるが




何時間か経った頃、インターホーンが鳴る


?何時だ?21時、そんなに経ってたか…こんな時間に訪ねてくる知り合いなんていないのだが…

再度インターホーンが鳴り、出ることにした

「はいはい、どちら様ですかね…」っとドアを開ける

ツインテールで蒼鷹高校の制服…意外、意外すぎる来客


「へぇ、やっぱりあんただったのね」


ニヤリと微笑む来客


「こ、小柳加奈?なんで…?」

「私、アンタの隣に住んでるのよ。誰が引っ越してきたのは知ってたし、駐輪場にはアンタのロードバイクがあったからね」

「そんな偶然があるのかよ…」

「んで、立ち話もアレだし、上がらせてくれないのかしら?」

「…まあ、いいだろ」


断っても勝手に上がりそうな気がしたので大人しく小柳を上がらせることにした


「うわ、散らかってるわね」


アルトワークス関連のデータを印刷してたが、後でまとめようとしプリントが散らかっていた


「仕方ねーだろ、こんな時間に誰が来るとは思わねーよ」


小柳をテーブルに座るように促し、ポットのお湯を出し急須でお茶を作る


「あら、気が利いてるじゃない」

「客にお茶ぐらい出せという教育をされてるんでな、それで何の用だ?小柳」

「加奈でいいわ。第一コーナーのオーバーテイク、どういうトリックなのよ?」

「…敵からアドバイスを貰いに来たのか?」

「いいじゃない」


随分とまあ、図々しいというか、貪欲なのか…


「第一コーナーは、消えるラインというべきか。お前のブレーキング動作に合わせて一気にラインを変えた」

「ほんの1秒も満たない間にそれをやってのけたって訳?」

「流石に初見のコースで初見の相手じゃやれないが、加奈と結衣のバトル、その前に朝に結衣の横乗りでタイミングを掴んでいたからな。ただオーバースピードで突っ込むからかなり慣れが必要だがな」

「なにげにアンタ物凄いことしてるわね…というバケモンか…」

「変則な走りに特化してる自負はあるがバケモンとは程遠いだろうな、速さならお前や結衣に敵わないよ。離される前にまさかのタイミングで仕掛けるしか俺には勝算はなかった」


結衣もそうだが、加奈の走りも負けず劣らずの実力


「明堂どころか、stGTトップクラスのドライバーといい勝負じゃないか?有名私立校や団体からスカウトされてもおかしくない気がするがな」

「私は小さい頃からカートや走行会のレース経験があるけど、スカウトに声をかかるほどじゃなかった。結衣に負けないように頑張って今に至るのよ…全くの素人に負けてられないって感じでね」

「…?ちょっと待て、もしかして結衣って過去にレース経験とか走行会の経験が殆どないのか?」

「驚くでしょ?ホンの一ヶ月で私や先輩達が追いつかないレベルになったのよ、ホントあの試合がなければ間違いなくライト級の頂点にいるドライバーになってるかもね」


奈緒が話してた悪質チームとの試合のことか…


「結衣は車を物として道具として割り切れないタイプ、それだけならいいけど極端に怯えるようじゃね…情けない姿を見ると腹立たしい」

「ライバルとしてか?」

「そんなところね」


奈緒が気持ちはわからなくないっと言ってたのはそういうことか

乗り越えべきライバルが実力ではなく、他の要因で弱くなっているなら…同じドライバーとしては、気持ちはわかなくないか…


「話が逸れたわね、それで最後にやったアレ。ホークイリュージョンでしょ?」

「よくわかったな」

「私たちのバトルを録画撮影したのを見たうちの部長が思い出したのよ」

「正確にはそれを似せた紛い物みたいな技だが・・・ホークマンが得意とし編み出したテクニック。原理とどういう理屈でやってのけてんのかわからんがオーバースピード気味に突っ込んで後続車のミスを誘導させ、最速のラインを外しててもハーフスピンからさらに踏み込んで制御しきるテクニック」

「挑発に乗った私も私だけど、なんで曲がりきれんのよ?プロのレーサーでもあれ再現出来る人間殆どいないのに…」

「…説明しようにも、なんとなくの感触と感覚でやってるからな、タイミングさえつかめれば案外難しくないけど…ただ、ホークマンに憧れてマネできないかなって練習しまくった結果なのかな…」


照れくさそうに言うと、加奈は少し呆れ顔で言う


「はぁ…あんたもホークマンのファンなのね」

「男の子なら、ヒーローに憧れるものさ。その反応だとあんまり好きじゃないんだなホークマン」

「ドラテクと技術はすごいって思うけどねぇ…あとGT-Rという車自体嫌いなの。ホークマンの愛車がそれだし…あと、結衣にホークマンの話題を振るとめっちゃウザイ」

「なるほど、結衣の好感度を上げるにはホークマンの話題を振ればいいのか」

「恋愛ゲーかい。結衣を攻略するつもり?」


ツッコミいれつつ、呆れ顔で言う加奈。そういえば結衣って学校内じゃ人気なんだっけな…


「うーん、どっちかというと俺は唐突に訪れた目の前にいる女の子が気になるがな」


冗談かつ、割と本音を言うと、少し驚いた表情をしたが


「へぇ…私が気になるのね…」

「夜中に男子の部屋を訪ねる可憐な女の子は気になるよ。好意でもあるんじゃないかって意識する」

「ふうん…」


加奈は意地悪そうなニヤついて顔をすると、机から体を前のめりにし顔を近づける

唇と唇が触れる寸前の距離、思わず赤面だったであろうオレ

すると、おデコに衝撃が走る


「痛た!?」


加奈にデコピンをされ、デコを抑える。意外に痛てぇ…


「なんてね、冗談よ。あーなんか一矢報いた感じてスッキリした」

「せめてバトルで一矢報いろよ」


期待した俺がバカだったか…



「そういえば加奈、お前一人暮らしなのか?家族で暮らすって広さはないだろこのアパート」

「うんまあ、訳ありよ」


あんまり深く聞くような話題じゃないか…


「そう言うとアンタこそ、家族は?」

「実家は隣県だ、母さんと二人暮らしだけどな」

「父親はどうしたのよ?」

「いないよ、元々俺は孤児で母さんに引き取られた養子なんでな」


そう言うと、何かしら察した感じの加奈。あまり触れて欲しくない話題とか思われたか


「別に気にしちゃいないんだかな」

「本当の親とか気にならないの?」

「全然、今更名を名乗られもただの他人としか思わないな」


加奈と他愛のない会話をしてると、時刻が22時になっていた

加奈は立ち上がり


「そろそろ、帰るわ。お茶、美味しかったよ」

「そりゃ、どうも…なあ加奈、お前がラッシーについてるのは結衣と対立するためか?それとも結衣に立ち直って欲しいのか?」


出ようとする加奈に問う


「両方でもあるけど…それだけじゃないの」

「…言いづらいことか?」

「そうね…今は、まだなんとも」


…初めてだ、相手の素性が読めないのは…観る眼には自信があったのだが

ただ、加奈の結衣に対する思いは本物だ


「それじゃ、また…」


加奈は部屋を出よとすると、彼女から腹の虫が鳴く音がした。オレにも聞こえるレべルで

思わず、お互いに硬直し、恐らく加奈は赤面しているであろう…耳が真っ赤である


「…夕食がまだだったか?何か食べていくか?すぐに支度が出来るが」

「い、いいわよ別に…」

「いやー、料理には少し自信があってだな…オレもまだだし、それに、一人で食べるのも何か味気ないし、こんなに可愛い子と共に食事が取れるなら…ね?軽いものだけど、どうだ?」

「…そこまで言うなら」


加奈と食事を席に共にしたいのは、これまでの情報取集目的もあるが…ただ、単純に彼女が好みだからである

物凄く幸せそう遅めの夕食を済ませた加奈は、すぐに隣の部屋に帰っていった…マジで隣かよ

結衣の本来の走りを取り戻すことを望むか…俺になにかできること探してみるか


加奈の部屋


「もしもし?うん、接触したよ。とりあえずある程度必要なことは聞けたよ。プロト0、山岡徹也はホントの出生は知らないみたいだし、興味もないようだよ……鷹見結衣と共に監視対象に?わかったよ…小柳父さん…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る