偽りの舞台劇篇 蒼鷹自動車部騒動
作られた偽りの舞台の幕開け
ピピピピピピピピピ!!!!!!
「ん…」
薄暗い部屋にアラーム音が鳴り響く。体を起こしアラームを止める、時刻は早朝の5時00分
軽めの朝食を摂り、支度をする。家を出て走って登校、トレーニングにもなって一石二鳥という所かなこれが私の日常だ
学校に着くとさらにその奥、登り坂の頂上にある部室、そしてコースへ向かう
ガレージのシャッターを開け、一台の止まってる車のボンネットを空け、オイルの状態を確認その後キーを回す
K6Aの始動音が響く、アイドリングが安定する間にタイヤの状態をチェックしていき各部の状態が良好であるのを確認するここまででおおよそ5分程
運転席に乗り込み、ガレージから車を出す、HA21型アルトワークス 今この部室にある唯一の車だ。
アルトワークスを慣らしに50km/h程でコースを走らせ…2周ほどした辺りで各部温度を確認する
「水温、油温安定…油圧もOK…電圧、モーター駆動も問題なし、よし!」
フルスロットルで彼女はアルトワークスの走らせる、ホームストレート時速は100km/hを超え、第一コーナーに突っ込んでいく
ブレーキング、ヒール&トゥとエンブレをかけ車体が前のめりになりGが襲いかかり、コーナーをクリアしていく
続けて、S字コーナー、タイトなコーナーをクリアしていき、コースを4周走りきった時
ふと、ロードバイクとこちらを見ている生徒に気がついた
徐々に速度を落とし、彼の前に車を止めた
転校してから2日目、いろいろバタバタしていた為本命の目的の自動車部に伺えずどうせなら早起きしてコースでも下見しようかと思えばまさかエギゾースト全開で朝練してる奴がいるとは思わねーよな
以前の学校なら近隣に配慮とドライバーのコンデション的に意味がないと朝練はなかったが…
しかし、見事なドライブだ結構ギリギリまでアクセルを踏み込んでかっ飛ぶ車体を制御し、速さに繋げていく、素晴らしいドライブテクニックとセンス、そして身体能力が高いのも伺える走り
良い所を見ればそう思えるが…
そう観察しているとワークスがこちらの前に止まり、ドライバーが降りてくる
驚いた…女子の自動車部のドライバーはそう珍しくないが…瞳…彼女の瞳は
「あの…そう見つめられると、ちょっと照れるというか…」
その女子は照れくさく言う
「ああ、すまん珍しい目だと思って…気に障ったなら謝る」
「よく言われますからいいですけどね、悪い気はしないし…って、あれ?」
今度はこちらの顔をまじまじと見てくる。
「赤と金色…」
「ああ、俺も左右の瞳の色が違うんだ。色合いが近いせいで、パッと見でだと、君ほどわかりやすいものじゃないけどな」
「同じ症状の人に会うなんて、片目は同じ金色だし…なんか運命を感じますね」
「たしか、あなたは昨日転校してきた…」
「2年5
「2年1
目を輝かせてこちらを見てくる。かわいいな、おい
「21型のワークスか、結構良さそうだな」
「少し運転してみます?」
「うーん、まだ入部してないから運転は…それなら隣乗ってもいいか?」
「もちろん!ただ本気で走りますからね!」
ワークスのナビシートに乗る、内装は軽量化目的の為か内張は殆ど外されており、メーター各種後付けされている
「それじゃ、行きますよ!」
クラッチを繋げ、徐々に速度を上げていく
これは上手い、クラッチの繋げ方で既にドライバーの上手さはわかる。
迫る第1コーナー、一気にブレーキングをかけるがすぐS字のゾーン
車体の軽さの利点を生かし、深い所までブレーキングしていき最適なラインを描く。
抜けると更にきついRのコーナー、アウトインアウトで進入していく
想像以上にドライバーに負担がかかるコースだこれ、コーナーもそうだが、アップダウンが激しい
横と上下にドライバーを振り、アクセル操作を、誤ればすっ飛ぶデンジャラスゾーン
ナビシート乗ってるオレでも結構体力が持って行かれる
軽さ故にすっ飛ぶような加速力、軽スポーツターボ+モーター駆動の車両ならではの走り
「♪〜」
鷹見さんは慣れているのか、鼻唄混じりで運転してる…
この後5周程、横に乗せてもらった
「ふータフなコースだな、ドライバーの練習には持ってこいだな」
「山岡君すごいね、大体の人は降りたらグッタリしてるのに…」
「前の学校も自動車部だったんでな、それなりに体が鍛えてるさ」
「そうなると…ドライバーということ?」
少し表情を曇らせる
「うーん、一時期怪我してな…今は完治したけど前の自動車部は裏方だよ」
「へぇ…」
ピピピピピピピ!!!!
鷹見さんのスマホのアラームが鳴る、時刻は7時50分
「あ、そろそろ片付けて教室に行かないと」
「なるほど、その為のアラームか手伝うよ」
ワークスをガレージに入れ、校舎に向かうが…
「ぜぇぜぇ…」
コースから校舎に向かうのに、鷹見さんは走りだったが…速いわ。ロードバイク乗ってる俺が置いていかれた
「足の速さには自信があるんですよ!」
「君、陸上か駅伝やったらスターになれるよ」
クラスが違うため、それぞれの教室へ
「それじゃ、山岡くん放課後5組に行くから」
12時 2年5組
昼休み、俺の前の席にいる眼鏡を掛けた男子が話しかけてくる
「山岡君山岡君、転校して早速女子に手をかけるとは隅に置けないな~」
意地悪そうな表情で話しかけてくる、こいつは阿部。
転校初日から話しかけてきて、同じ車好きで意気投合した。
「違う、誤解だ。あれは自動車部を見学してたらな」
「知ってるよ、結衣ちゃん。自動車部の最速のエースドライバー、それに何よりオッドアイで容姿も可憐、みんなのアイドル的な子!あの子目的で自動車部にいた奴も少なくないからな」
大人気だな鷹見さん…
「ただ今の自動車部に入るぐらいならオイラ達のチームに入ってくれよ、徹也君なら大歓迎だよ?
stGTに参加するには16歳以上からであり、学生部活動以外に団体組織等のチーム等が参加できる阿部はそこに属してるようだ
そして元自動車部の部員だったようだ
「うーん…それもいいかも知れないけど…」
「おーい!山岡!」
廊下近くの生徒が呼ぶ
「3年生の人が、お前を呼んでるぞ!」
「3年生?はて?知り合いなんていないと思ったが」
「あー…多分どっちかの部長じゃないかなぁ」
廊下に出ると、3年の男子がいた
「君が山岡徹也君かい?俺は3
「自動車部のラッシー派の部長か、ある程度の事情は元部員の阿部から聞いてますよ」
「それなら話が早い、こちら側の方に付かないか?車も設備も商店街派より充実してるし」
「…商店街派に戦力を与えたくないとも考えられますね、俺があなたならそういう手を打ちます伊東先輩」
「商店街より金を出すラッシーグループの案に乗った方が実に合理的だろ?明堂学園の自動車部にいた君ならわかるだろ?」
明堂の名前を出してきたか…いやラッシー派に誘ってる時点で俺のことをある程度は知ってるか
「確かに、自動車部にとって資金は大事だ…だがな善意で協力してきた人達の恩を仇で返すようなやり方はな…」
「俺も心苦しいさ、でもなそんな甘いことを言ってられない」
「…そういう考えなら尚更、あなた方に付くわけにいかない」
どうも、この伊東先輩俺と似た人種だなって思ってたら
「ちょーーーっと待ったァァァ!」
伊東先輩と俺の間に女子生徒が割って入ってくる
「ダメですよ!伊東先輩!結衣が先に声をかけたんですから徹也君は私達が貰うんです!」
と言い俺の腕を掴んでくる、女子
すると1組の方から鷹見さんが走ってきた
「ちょっと待ってよー、
「結衣も放課後とか悠長なことを言わないで、さっさと入部届を書かせなさい!ラッシー派に新入生取られたんだから、少し強引でも色仕掛けでもして誘惑しなさい!」
「そこまで言う!?」
呆気に取られてると、伊東先輩はやれやれって感じで
「相変わらずだな、奈緒は。安心しろ、俺はフラれたからな後はそっちの自由に。山岡徹也、その気があるなら
そう言うと、伊東先輩は立ち去っていく
「べーだ!今度は来ないように塩撒いてやる!」
奈緒と呼ばれてた子怒りの表情をしながら、舌を出していた
校舎内 自動車部第二部室
本棚に車関連の雑誌やら、ファイル等、ロッカーにレーシングスーツやらヘルメット等ある部室に案内?というか奈緒と呼ばれた女子に腕を掴まれて連行された
「いやーありがたいねぇ、今年度二人目の新入部員が来てくれて。これでstGTの参加できるよ!」
「いやいやちょっと待て、確かにあっちの方に付く気はないと言ったけどな?君たちに付くとも言ってないぞ?」
そう言うと、「え?」みたいな表情し始め
「えー…こんな可愛いくて、弱々しい私達の味方になってくれないの・・・?」
っと、なんか演技気味た表情で言ってくる
「奈緒ちゃん…こんな説明もなく無理やり連れてくるなんて手段とったらねぇ?」
「はぁ…鷹見さんいいよ…だがさっきstGTに参加できるって言ってたな?もしかして俺を含めればメンバーギリギリなのか?」
stGTに参加するには一定条件があるが、その中でチームメンバーは六人以上という制約である
個人戦ではなくあくまでもチーム戦という体制をとる為ということらしいが…
「うん…現在5名…2年生は奈緒ちゃんと私の二人、3年生二人、1年生一人という状態なの」
「思った以上に深刻だな…そうなると身近な競争相手がいない状態か?あっちのラッシー派と一緒に練習してる訳じゃないだろうし」
悲しげに奈緒が話す
「大半があっちについたり、他のチーム参加しちゃったからね…もっと部員も多かったんだけど」
「不安定な状況下で、stGTに参加できるかどうかの状態じゃ誰も付いて行きたくないか」
しばらく、沈黙が流れた…すると奈緒が思い出したかのように
「そういえば徹也君って、前の学校ってどこなの?自動車部だったんだよね?役割は?」
っと食い気味に聞いてくる
「…
「へぇ、明堂学園の……明堂!?」
かなり驚いた表情をする奈緒に対し、鷹見さんは「?」という表情
「奈緒ちゃんどうしたの?」
という鷹見さんに、奈緒は鷹見さんの胸ぐらを掴み
「いやいや結衣あんた!明堂学園ってね、関東エリア最強のstGT強豪校よ!上位入賞なんて当たり前!プロになったドライバーも数多いし、学生の時点でプロのレーサークラスがゴロゴロいるのよ!」
「わかった!わかったから離してよ奈緒!」
そんな期待されもなぁ…
「あ、でもピットクルーなんだよね…でもこれ以上ないぐらい心強いよ!」
「…あれ?でも山岡君、今朝話した時はドライバーもできなくもないって言い方だったけど?」
「そうだけど、鷹見さん程速くは走れないよ。明堂でもさほど速い乗り手じゃなかったし、俺は裏方に徹するよ」
「裏方に…あ、それじゃ!」
鷹見さんと奈緒は目を輝かせてこちらを見る
「あの、伊東先輩やらラッシー派についた連中を叩き潰すのも面白そうだしな。俺でよければ力になるよ」
「ありがとう山岡君」
「ようこそ!自動車部商店街チームへ!」
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