三話 吸血鬼

 夢を見ている。

俺はおかしなことに水の中にいた。

俺は泳げないでいた。

ただ沈んでいく。


そして最深部に到達すると、なにか映像を流している。

そして音も聞こえてくる。

そして見えてくる。

その映像にいたのは幼い子だった。

そこから見える風景は開放的とはほど遠い場所だった。


「あなたは?」


 目が腫れて赤い幼い少女は質問する。


「俺は沖田佑夜、君は?」


 幼い少年は答える。


「私は‥‥城上魄愛」


幼い少女はどこかおかしい。なのにその違和感に幼い少年は気づかなかった。

そればかり幼い少年は聞く。


「どうしてこんな場所に?」


 幼い少女は封印されているのか一人寂しい空間にいた。

幼い少女は少し笑顔で顔を横にふる。


「私は気づいたらここにいたから」


 幼い少年は気が悪そうな顔をしたすぐに変わり、


「なら外には出たことはあるの?」


 そう笑顔でまた聞いてみる。


「お庭までなら‥‥‥」


「そう、なら俺と一緒に出ようぜ」


 幼い少年は幼い少女に手を伸ばす。

さぁ、行こうという気持ちがわかるような気がした。

 しかし幼い少女は残念そうに顔を横にふる。


「今は無理」


「そうか、ならこれ」


 幼い少年は銀色が目立つ髪留めを渡す。


「ありがとう」


 幼い少年は幼い少女の満面の笑みを見て、少しドキッとしたのか顔がほんのり赤く、頬をかいて少し左下を向く、がすぐ幼い少女の方へと向き、


「また会うから待っていて」


「うん!!」


 そうしているとガチャとドアが開く音がした。幸い死角になる場所だったため少しだけ見つかるまで時間がありそうだ。


「じゃあ」


 幼い少年は幼い少女に手を振り、消えていった。

それと同時に俺も底なしの暗闇に消えていった。
















「うーん」


 俺は意識を取り戻し、目を開ける。

しかし懐かしい夢をみたような気がする、もう覚えてないけど。


「覚めたのね!」


 その声は咲耶だった。

珍しいな。


「呼んでくるから待ってて」


 咲耶は慌てた様子で俺の視界から消えていった。

そこで上半身を上げる。

見えたのは肌色のカーテン。ならここは保健室で間違いなさそうだ。


 いつまで寝ていたのだろう?

そして時計を見ると二時間ほど寝ていたようだ。


 バンッ!!


 銃声がした。

しかし実際はそんなことはなく、保健室の扉が強く早く開けられる音だ。


「佑夜!」


「魄愛様!」


「大丈夫ですか?!」


 魄愛様が勢いそのまま近づいてくれる。ありがたい。

 そして俺の手を握って?え?え?

ハクアサマガオレノテヲニギッタ?

プシュ〜


「どうしよう、瑠奈、また佑夜が倒れた!」


「またですか?」


木宮の呆れた声が聞こえた。







「うーん」


 俺はもう一度起きる。

 不覚にも魄愛様が俺の手を!にぎって!くるなんて予想外だろ!!

そんなことを心の中で思っていると、


「起きたのね」


「ああ」


  魄愛様ではなく咲耶こいつか。なんか慣れてるから落ち着くわ。


「あれ?魄愛様は?」


 魄愛様のお姿が見当たらない。


「あんたは魄愛様が大好きなのね」


「まぁな(ドャ)」


「ドヤ顔をすることではないと思うけど」


「そんなことより本当に魄愛様は?」


「沖田がこんな状態だから従者の試験は明日になったから‥‥‥部屋に戻ったと思うわ」


「そうか」


さすがに二回も倒れてしまってはそう思われるのは仕方ないことだろう。


「あと木宮さんがなんとかして魄愛様を説得して帰らせたから、別に魄愛様が沖田、あんたに失望しているわけじゃないと思うから」


「咲耶‥‥‥いいことをありがとう!!」


俺は珍しく咲耶に感謝の意を示すために手を握る、さらに魄愛様が俺のことを見損なったわけじゃないから良すぎる。

 よし、明日頑張ろう。


「はいはい、わかったから」


咲耶はそう言い、俺の手をほどく。しかし少し顔が赤いような気がする。


「なんか顔が赤いように見えるが大丈夫か?」


「エ、まぁ、今日二回も倒れた沖田よりましだし!!じゃあ!!」


 咲耶はなにかから逃げるように保健室から去っていくが‥‥‥


「ちゃんと気をつけて帰りなさいよ!!」


 と保健室の扉を開けて、そう言うと、ドタッと音がして足音が遠くなっていく。


「なにがましなんだ‥‥‥ってさっきよりも咲耶の顔が赤くなっていたように見えたのだが‥‥‥まぁ、気のせいか」


俺も寮に帰る準備でもしますか。

 しかし荷物は置いているから手ぶらで帰るだけなのだがな。


 そして今日倒れた理由は転生する前の自分がなにか持っていたということ。だけどこれについては現段階においてなにかできるわけがない。

毎回転生のことでこうして倒れるのは嫌だけれども、なにかつっかえがあるから、俺は転生のことについて考えてしまう。しかし耐性がない。


「あ」


 そうだ、つっかえのことは気にしても思い出さないようにすればいいいのだ。

それなら倒れなくて済む。

 

 「ん?」


 俺が保健室からでると、学校の雰囲気がおかしいことに気づいた。夕日が見えていることから少し雰囲気が暗くなるはずなもので、ここまでの寒気は感じないはずだ。

まるでどこからともなく監視されているように思える。

 でもその視線の本質は温かい視線のような気がする。

俺はいてもいられなくなりその視線の主を探すことにした。  


 まず俺は屋上に向かった。しかし施錠されていた。

ならばと高族の魄愛様のクラスに向かう。


 ビンゴ


 間違いなくここにいる。そんな気がする。

俺は大胆にドアを開ける。

そこにいたのは。


 コウモリのような、いやアニメの世界で見る吸血鬼の姿に酷使していた。

でも頭のところには見覚えがある髮飾りをしていたり。

 姿は違うともある人を思い出してしまう。


「魄‥‥‥愛‥‥‥様?」


 はっ!ポツリと呟いてしまった!


「佑‥‥‥夜?」


 魄愛様の声だ。

それより、


「魄愛様って吸血鬼なの?」


「そうだからもう来ないで!」


 なにを言っているんだ?俺にとって魄愛様は大きな存在だしこれからも絶対に変わることはない、だから魄愛様がどんなお姿でも俺は絶対に嫌ったりはしない。


「吸血鬼とか魅力の一つじゃん」


「え」


「本当だよ」


「そうなのね、えへへ」


 かわいい。なんだこの魄愛様は!魄愛様は元の姿にお戻りになる。

少し残念だ。普段と違うからギャップがあってさらに美しいのに。


「佑夜、残念そうにしてるけどもう少ししたら瑠奈が帰ってくるからね、あ、このことは秘密よ」


「もちろん」


 だって魄愛様の秘密なのだ。そして木宮はこのことを知らないと思うと、俺は嬉しいに決まっている。そして俺だけは知っている秘密ということになり、魄愛様から俺が特別視されていると思っておきたい。

どうやら木宮がくるらしいのでもう帰ろうか。


「では、魄愛様、また明日です」


「はい」


 魄愛様は笑顔であった、なんだこのかわいい生物は?

俺は走って教室を出てそのまま寮まで走った。






 行ってしまった。

でも明日も会えるんだしいいよね?


「魄愛様、こんなところにいたんですか、早く帰りますよ」


「そうね」


「魄愛様、なにかいいことでもありましたか?」


「???」


「だって笑顔じゃないですか?」


 ああ、いけない、佑夜と会えて話せたからっていけない。


「フゥー」


 私は息を吐き出す。

よし、気合を入れる。


「行こう」


「はい」


 私たちは帰る。この学園の生徒は全員卒業までは寮に住むことになっている。寮は高族と中族に分かれており、高族は一人一人専用に作られている部屋でそして広い。

 中族は瑠奈から聞いた話によればとりあいず量産された部屋に一人一部屋だそうで、高族と中族の寮の大きさはあまり変わらないが高族は一階にだいたい3〜4部屋に対して中族の方は一階に四つの廊下があり、そして一つの廊下にある部屋の数はだいたい100だそうだ。

 それでもプライバシーのためにどの部屋にも防音対策はされているらしい。

私はそのことを聞いた時は驚いた。


佑夜をびっくりさせたいからいつか私のお部屋に誘おうかな?あ、その時は立場が対等の時がいいな。でも佑夜に彼女ができる前にしておこう、そしたら先にお部屋の大きさをより体感してくれるはずだ。

 でも実際は対等になることはないと思う‥‥‥だって身分に偽りがあれば佑夜は東日本の軍に捕らえられると思うから。

私は知っている、佑夜が西日本の人間であること、なぜなら私が小さい頃に一度西日本を訪れた時に会っているのだから。

 佑夜はきっと身分を偽っていないだろう。そんな危険を冒してまでこの学園に来る理由がないのだから。


 思い出は途中だけれどもまた思い出す機会があると思って一旦ここまで終わろう。































 















 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る