番外編8 また会う日まで

 あれから、グレイとは色々な場所を旅した。海の見える町へ行ったり、山を超えたり。時にはよく分からない変な国を訪れたり。様々な危機も乗り越え、美味しいものもたくさん食べた。

 そして、ついにその日がやってきた……


「ブラッド、ここで、お別れだな」


 グレイが言った。


「そうだね」


 いつか別れの日が来ることは分かっていたけれど、やっぱり悲しい。

 グレイには、行かなければならないところがあるそうだ。この先に、彼が昔いた、サーカス団の人々が亡くなった場所があるらしい。

 グレイには、サーカス団の人たちを殺してしまったという過去がある。もちろん、それは、彼が狼になって理性を失っている間の話だ。知らなかったとしても、彼は責任を、そして罪の意識を背負っている。


「ここから先は、どうしても、一人で行かなければならない。ちゃんと謝って、罪を償わなければならないんだ。謝って済む問題ではないと思うけど」


「うん。僕はずっと、君の友達だから。応援してるよ」


「ありがとう、ブラッド」


 グレイは微笑んだ。彼にはもう、生きていく決意はできているんだ。そのために、ちゃんと過去と向き合っている。そして自分自身とも。全部自分の力で解決しようとしているんだ。だから、僕はグレイの意志を尊重する。本当はもっとずっと一緒にいたいけれど。


「ブラッドと旅ができて、すごく楽しかった。ありがとな」


「僕の方こそありがとう。君と一緒に過ごせて、楽しかったよ」


 グレイと一緒にいた時間は、すごくいい時間だった。最高の友達だと、改めて実感した。


「大丈夫、俺たちはまた絶対会えるから。世界のどこにいたって。今回だって、俺たちは不思議な国で、運命的な出会いをはたしたんだからな」


 とグレイは八重歯を見せて笑った。


「そうだね。僕達は友達だから、必ずまた会えるよね」


 根拠の無い自信が、僕たちにはある。


「いつかお前の館にも招待してくれよ?」


「ああ、もちろんだよ。豪華すぎて腰を抜かさないようにね」


「ばーか」


 僕たちには笑いあった。


「それじゃあ、またな。ブラッド、ソフィアさん」


「またね、グレイ」


「お気をつけて、グレイ様」


 僕たちは、それぞれの道へ旅立った。


 また会う日まで……

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