番外編1 夜も眠れない
「ねー、ほんとにここで寝るの?」
「他にどこで寝るんですか? こんな夜遅くに、泊めてくれる人なんていないでしょう」
「それはそうだけどさぁ」
納得がいかない。
悪いおっさんを捕まえて、小屋に閉じ込めたあと、僕たちは朝まで特にすることもないので、寝ることになった。小屋の見張りは、盗賊がかわりばんこでやってくれるそうだ。その他の盗賊たちは、布にくるまり、なんの抵抗もなく地べたですやすやと眠っている。
もう夜中の一時を回っている。村の人々もみんな寝ている。というわけで、僕たちは野宿する羽目になったのだ。
「君は平気なのかい?」
「私は平気ですよ。どこでも眠れますから。慣れですよ」
慣れって……ソフィアはそんなに地べたで寝たことがあるのか?
「私は疲れたのでもう寝ますよ。あとは勝手にしてくださいね」
そう言うと、ソフィアは地面に横になった。
「マントにくるまれば、少しはマシですよ」
と助言をしたあと、しばらくして寝息を立て始めた。暗闇に一人取り残された僕。気は進まないが、とりあえずマントにくるまって、服に土がつかないように横になった。
どのくらい時間がたっただろう。寝れない。今日は満天の星空だ。遠くまで続いている。世界は広いなと感じる……
あ、そうだ。分かった。なんで寝れないのか。
僕はソフィアを揺すった。
「ねえ、ソフィア」
「……んん、なんですか……? せっかく気持ちよく寝ているというのに……」
いや、逆に、よくこんなところでそんなにぐっすり眠れるな。
「どうやら僕、棺がないと寝れないのかもしれない」
あの狭くて、身動きの取れない空間が落ち着くのだ。だから、こんなに広い場所だと、なんだかそわそわしてしまう。
「館に棺を取りに帰ってもいいかい?」
「……何馬鹿なこと言っているのですか?」
ですよね。分かってる。万が一取りに帰ったところで、ここまで持ってくることはできない。重すぎる。そしたら、結局館で寝ることになって、僕の旅はエンド。だめだめだめ、まだ一日目だ。
「僕、このまま一生寝れないのかな……そんなの嫌だ」
僕が嘆いていると、ソフィアがため息をついた。
「……うるさいですね。今度寝袋買ってあげますから、ちょっと黙ってください。私は寝たくてしょうがないので」
「寝袋!」
その後、僕は何度か話しかけたが、ソフィアはもう喋ってくれなくなった。
寝袋があれば、ちゃんと寝れるかもしれない。あれは窮屈そうで最高だ。
結局この日、僕は一睡もできなかった……
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