02

『スプリントスナイパー。わたしが連絡を担当します。調子はどうですか?』


「いいね。かなりいい。何人でも倒せそうだ」


 視界の端が、いつもよりはっきりしている。地形の複雑さも、だいたい把握できた。


『あの、いえ、通信の調子が、です』


「あ、通信の調子ね。わるくないです。聴こえてます」


『それはよかった』


 狙撃用の武器。走れる脚。地面からほんの少しだけ飛ぶ背中装備。


「で、指揮官は?」


『あなた、だと、思います』


「満場一致?」


『というより、この戦闘領域を理解しているのが、わたしとあなただけです。スプリントスナイパー』


「そういえば、名前聞いてないな」


『名前ないです』


「じゃあ、連絡担当と呼ぼう。展開はどれぐらい自由にできる?」


『戦術も戦略も理解している味方はいません。ただ、ほぼ全員かなり戦闘のスコアは高そうです。要するに、ごりまっちょ』


「ごりらの集団なわけね」


『はい。ごりらなので、暴れてくれると思います。ぼすごりらが指示を出せば、ですけど』


「俺が、ぼすごりら、かあ」


 しかたない。士気でも上げるか。


「全員に繋げ」


『了解。5秒後に繋がります』


 本当に5秒で繋がった。この連絡役、思ったよりも通信能力が高いのかもしれない。

 狙撃用の武器。

 上空に向かって、大きめに一発。

 そして、通信を入れる。


「全員聞け。この戦闘領域は俺、スプリントスナイパーが指揮を行う」


 通信越しに、ざわつきと興奮。いい感じだ。


「相手は、乱戦特化の指揮官。ちまたではケイオスドライバーと呼ばれている」


 また、ざわつきと興奮。


「指示はひとつだ。これから、全員に分かる形で戦闘領域にラインを引く。そのラインが防衛線であり最前線になる。各員。そのラインの付近で戦ってほしい。それだけだ」


 全員が、黙る。いい感じになってきた。全員の意志と目標が一致する。これが、まさに、指揮の快感。


「戦闘で目覚ましい活躍をしたやつは俺と一緒に戦闘領域を走ってもらう。いいか、ライン厳守。ルールはそれだけだ。行くぞ。乱戦相手には正攻法で突破する」


 もういちど、上空に向かって、大きめに一発。

 喚声かんせい

 それを確認し、通信を切る。


「ラインを構築する。地形図から大きく上下幅のある場所をマーク」


『地形図から大きく上下幅のある場所をマーク』


 表示された場所に、線を引いていく。


「まずはこうだ。全員に共有しろ」


『全員に共有。完了しました。共有までのラグは5秒です』


「十分だ」


 走る準備。さあ開戦だ。


『わたしがやばくなったら、連絡いれますね』


「助けに行けるかは分からんぞ」


『大丈夫です。ついていきますから。ほら。後ろ後ろ』


 振り返る。忍者のコスプレみたいなやつが、ひとり。


「隠密特化か」


『攻撃力0です』


「ついてこれるかな」


『わかりません』


「まあいいや、行くぞ。戦闘開始だ」

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ケイオスドライバーvsスプリントスナイパー (RD) 春嵐 @aiot3110

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