23日目「一つの見解」
「昨日君からもらった宿題、考えてみたよ」
いつも通り情報処理室に紫音さんと集まって、ちょっとした報告会を開く。今回のお題は、昨日に引き続きアタシの気付いた差異に対する考察だ。別の誰かと結ばれる人間と、空いた穴が埋められない人間の違い。
「そういえば、私の母も別の女性と結ばれていた。これで結ばれる側の母集団も増えたわけだけど」
紫音さんは今までの知る限りの事例をホワイトボードに書き出していく。ネットで有名人の情報を調べたり、知人の状況を聞いたりして、集められる限り集めてみたのだが、これが少し面白いような難しいような結果になっていた。
「これは、少なくとも私たちと同年代は全くと言っていいほど今回の調査では独り身になってしまっているね」
そう、わかりやすい特徴としては、新しく結ばれたグループに、未成年が一人も入っていないのである。もちろん、アタシたちが自力で調査した分に過ぎないので、例外はいくらでも出てくるだろうけど、それにしたって、少し不自然な偏りにも見える。
「かといって、成人女性の誰もが新たな繋がりに生きているわけじゃないですよね」
これが一番この問題を難しくしている要因である。仮に成人女性が揃って別の誰かと結ばれているのであれば、年齢によるものだとわかるのだが。現状、規則性はありそうだが、それがなんなのか判別できないというところだ。
「あるいは、精神的な問題かもしれない。よく言うだろう、子供は恋愛ごっこをしているにすぎないとか、そんな話さ」
つまり、本当に、心から愛する人を失ったもの同士が、結び直されるということだろうか。世界が認める愛とでもいえばいいのだろうか、すこしメルヘンな話にも聞こえるが、こんな状態でメルヘンも何も言ってられないかもしれない。
「あんまり、精神論は主張したくないんだけどね。なにか、おかしな世界でも明確な基準があるはずだと思いたいものだ」
そういえば、紫音さんは理系だったか。ならば、確かに生物学的な基準があると信じたいのかもしれない。アタシからしたら何が何だかわからないし、そこにこだわるだけの頭もないのだけど。強いていえば、それが世界を取り戻すヒントになるならばと言ったところだ。
「とりあえず、結構気になる違いだから、私は私で研究してみるよ。ありがとう、紗奈ちゃん」
紫音さんは一通り今回の件をノートにまとめると、そう言ってアタシの頭を撫でてくる。嬉しいには嬉しいけど、少し恥ずかしかった。
これでまた、少し事態が進展するといいのだが。
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