22日目「気付き・繋がるものと失うもの」

「なんだかすっかり仲良くなったね」

 昼休み、今日も今日とて屋上に行くと明日花さんと一緒に昼食を食べる。前に見た寂しさを漂わせた顔に同情というか、思うところがあってのことだった。別に、そっとしておいてもいいんだけど、なんとなくいい気がしないのである。

「そういえば、今日はサボっていなかったんですね」

 アタシは今日の弁当を眺めつつ、聞いてみる。そう、今日はアタシと明日花さんは屋上で出会ったわけではない。なんと、廊下で鉢合わせたのである。それで、互いに屋上に向かうつもりだとわかり、こうしているところだ。本当に、すっかり仲良くなったものだ。別に共通の趣味もなければ、特別気が合うわけでもないが、どこかで繋がれるものがあるのだろう。

「そうだね。模試も頑張ったし、少しくらい続けようかなって」

 明日花さんはアタシの言葉に影響を受けたことを照れ臭く話す。と、ふとアタシはこの世界の違和感に思い至った。アタシの母さんと、明日花さんの間にある、決定的な違いだ。どうしてすぐに気づけなかったのだろうか。これほどまでに大きな矛盾だというのに。

 どうして、失った穴を埋める人がいる場合と、失われたままである場合が混在しているのだろうか。といっても違いを比べるだけの母数がないのでなんともいえないのだが。明日花さんと賑やかにしていた(とアタシが思っているだけかもしれない)人は、この世界から消失したままで、別の誰かがその穴を埋めてはいない。美咲の彼氏もそうだ。彼女がいるならいざ知らず、絶賛募集中だと言っていた。そして、皆が皆そうであるなら一向に構わないのだが、問題はアタシの母さんである。父さんの代わりに、遥さんという一切知りもしない女性が母さんと結ばれている。なぜ、この違いが生まれるのだろうか。

「あれ、紗奈ちゃん、模試で疲れちゃった? なんだかぼーっとしてるけど」

 考えていると、明日花さんは心配そうにアタシの顔を眺める。う、非常に答えにくい。模試、あんなに熱く語っちゃったのに、結局出ていないんだよな……。我ながら不良になってしまったと頭を抱えたくなる。

「なんでもないです。ただ、ちょっと気になることができちゃって」

 そういえば、前も明日花さんは目ざとくアタシが悩んでいることを見抜いていた。きっと、優れた観察眼があるのだろう。もしかしたら友人の相談とかを受けていたかもしれない。そんな、推測するしかない過去を思う。

「きっと、近いうちに話します。驚かせてしまうと思いますけど」

 もしかしたら、明日花さんなら覚えていなくても、なんて思ってしまう。

「うん、その時は頼って欲しいな。先輩なんだし」

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