19日目「私も行こう」

「と、いうことで、明日駿河女子にいる仲間と顔合わせしてきます」

 放課後、アタシは昨日の話を念の為紫音さんに話しておくことにした。一応仲間だし、話して損することもないので、別にいいだろう。守秘義務もないし。それで紫音さんが先生に密告するような人だったら困るけど、流石にね。というわけで、情報処理室である。今日はあまり暑くないので、エアコンはなしだ。

「ああ、美緒ちゃんだっけ。いや、この場合くんかな」

 紫音さんはアタシの話を聞くと、思い出したように確認する。そういえば、連絡先を渡したんだったか。早速知り合ったようで、まあいい傾向だろう。

「まあいいや。私もついていこう」

 紫音さんは張り切って話す。いや、ちょっと待て。紫音さんって確か先輩だったはずだよな。三年生が、模試を受けないとでもいうのだろうか。いやいや、流石に。

「受けない身で言うのはアレですけど、3年生は受けた方がいいんじゃないですか。ほら、先生の印象にも響きますし」

 それで大学に行けないとかになったらちょっと笑えない。一回の模試の重みが違うと思うのだが。

「さてね。もとより私のような変わり者の評価は既に詰んでいたりするのだよ」

 紫音さんは笑いながら説明する。それはそれで今から巻き返すためにも出た方がいいと思うのだが、うーむ、それでいいのか?

「それに、世界が戻れば全て無かったことになる。とは思わないかな?」

 アタシの心配をよそに紫音さんは説明なのか言い訳なのか、判断に迷う話を続ける。そもそもその根拠はどこから来るのか。

「ほら、世の女性たちは全く覚えていないだろう? 男の痕跡を」

 ふむ、確かにそれはそうだ。母さんも父さんのことを愛していたはずなのに存在そのものを完全に忘却していた。そんなことがあり得るなんて、と思っていたが実際その通りであったのだ。でも、どうしてそれが今回の話と繋がるのだろうか。我ながらなかなか察しが悪いというかなんというか。

「つまりだ。世界が修復された暁には、この異変まみれの世界が無かったことになると踏んだわけだよ」

 なるほど、やっと理解した。この人はこの人で考えていたわけだ。なら、世界を戻すための集会という面もあるので、一緒に来てもいいかもしれない。

「まあ、正直なところ詰んでるから別にいいかなーって。学力はそこそこ優秀だし」

 やっぱり、この人は連れていったらダメかもしれない。

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