18日目「もう一人の共有者」

『そういえば、僕の高校にもう一人異変に気づいている子がいる話ってしたっけ』

 お風呂なども終え、自室でのんびりするような時間、美緒からメッセージを受け取った。そういえば、確かに前調べた時には駿河女子高校に二人いるところまでわかったはずである。それ以上のコンタクトをうまく取れなかったので、美緒としか知り合っていないのだが。

『一応いるってことくらいは知ってるけど、どうかした?』

 好奇心をそっとしまっておきながら、美緒に続きを促す。もう一人の仲間になるかもしれない子。どんな子なのだろうか。経験から推察するに、一癖も二癖もありそうなのだが、果たして。

『土曜日、会って話がしたいってその子が言ってたんだ。予定、合うかな』

 土曜日、土曜日はまずい。というか、合わせられない。ちょうど模試の日である。日曜日ならいいのだが、土曜日となると、難しい。一応、午後は空いているけど、休みたいのが正直なところだ。というか、駿河女子では模試を受けないのだろうか。

『模試があるから厳しいな。日曜日じゃダメ?』

 せっかく向こうから申し出てくれたのはありがたいが、仕方ないので交渉してみる。ダメならまあ仕方ない、模試の後にでも会おう。そう覚悟を決めてしばらく待っていると、新たなメッセージが届いた。

『こんな世界で模試の成績になんの意味がある。本気でどうにかしたいならそれくらいサボれ。だって』

 なんて強引な態度だろうか。流石に無茶だとも思うが、裏を返せばこの人はそれだけの覚悟と意志があると言うことなのかもしれない。それが正しいとは一概にはいえないし、1日ズレてなんになるのかとも言いたいが、1日でも早く元の日常を取り戻したいのだろう。あとは、男性がいない今正しいデータが取れないだろうと、そう言っているのかもしれない。さて、どうしたものか。

『僕もその子と一緒に模試を休むつもりだけど、どうする?』

 むむ、そう来たか、と美緒のメッセージに困惑する。まさか、美緒までそっち側だったとは。というか、駿河女子でも模試自体はあるのか。その上で休んで会う場所を用意するとは。流石に会いに行った方がいいかと、考えを改める。一応、最低限授業は受けるようだし、考えての判断なのだろう。

『わかった。土曜日、いつどこに行けばいい?』

 流石に前のように高校の前だと色々問題があるだろう。集まれそうな場所、どこがあるだろうか。

『駅の近くにあるカラオケ屋がいいんじゃないかなって話してる。10時ごろかな』

 時間と場所を指定するメッセージに了解と返し、カレンダーにメモしておく。ああ、これでアタシも立派な不良だ。母さんごめんなさい。そんな背徳感を覚えた。

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