15日目「模試って、必要ないよな」

 今日、模試の日程が連絡用黒板に張り出されているのを見た。なぜこんなものが行われているのだろうか。それも、せっかく期末考査が終わって日が経っていないくらいのタイミングで。別に頭が特別悪いわけでもないし、美咲に負けているとはいえ平均以上の点数は取れるのだが、いかんせん気乗りしないのである。しかも、今回までは国語、英語、数学の三教科のみだが、11月の模試からはなんと驚き地歴、公民、理科まで入ってくる。今からすでに気が重い。とにかく、アタシは勉強は苦手でなくても嫌いなのだ。まあ、みんなそうなんだろうけど。

「お、やけに浮かない顔してるね。土日は退屈だった?」

 昼休み、今日は雨に降られなかったので屋上で食べているのだが、明日花さんがアタシの顔色に気づいて聞いてくる。

「いや、土日はむしろそれなりに楽しかったというか、まあ、よかったんですけど、模試が」

 そういえば、明日花さんは3年生なのだからもっと頻繁に模試を受けるのだったか。少し悪いことをしたかもしれない。まだ回数も受けないのに気を重くしているなんて。

「ああ、分かるなあ。私も模試は嫌いだし、受ける気でないよね」

 アタシの不安を気にせず、明日花さんは笑って愚痴をこぼす。気遣ってくれたのだろうか、それとも、本気で言っているのだろうか。

「いっそ模試もサボっちゃおうかな」

 明日花さんは曇り空をぼんやりと見上げて呟く。そんな簡単に投げ出してしまっていいものなのだろうか。アタシは真面目とまでいうつもりはないけど、やるべきだと教えられたことを破ったことはないし、やって当然だという風に刷り込まれているので、そういう考えがない。アタシも一緒に空を見上げてみるが、雲ばかりに覆われている空は太陽も何もなく、寂しげで色のない世界が広がっていた。

「こう雲ばっかりだとなんだか、全部どうでも良くなってこない?」

 明日花さんの言葉に、アタシは言葉もなしに頷いて同意する。自分まで、灰色に溶けてしまいそうな気がしてくる。そうして、何も考えないで、ぼんやり時がすぎていきそうな。

「でも、やらなきゃってことは、やらなきゃ。って、思いますけど」

 結局、アタシはどんなに空を眺めていても、模試をサボる気にはならなかったし、明日花さんにも偉そうではあるのだが模試をサボって受験勉強とかに失敗してほしくない。正直な話授業にも出てくれればいいのだけど。

「そっかー。後輩にそう言われちゃったら、やるしかないじゃんね」

 アタシの言葉に触発されたのか、明日花さんは勢いよく立ち上がってアタシの方を見ると、そう答えた。やる気になってくれたようなら、まあ良かったのだろう。

 アタシも、模試前の勉強を頑張らなくては。

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