14日目「なんだかんだプールは楽しい」
「やっほーう! プールだ!」
更衣室で着替え終わったかと思うと、美咲はそのまま大急ぎでプールに向かい、思いっきり叫んではプールに飛び込む。子供か。遅れてプールに向かうアタシと美緒は、その様子に苦笑いを浮かべ合っていた。
ちなみに今日の天気は思いっきり雨である。屋内プールのおかげで大丈夫だが、気分は上がらない。そして、気分が上がらない要因は、他にもあった。
「紗奈の水着、なんというか、大胆だね」
アタシの方を見るたびに気まずそうに目を逸らす美緒。彼女の言葉通り、アタシは今どういうわけかかなり露出の多い水着を着せられている。もちろん美咲の要求であるが、昨日あんなことをしてしまったアタシの落ち度なので、甘んじて着てやったわけだが、やはり恥ずかしい。しかも美緒は結局競泳水着なので、露出度の差から余計に恥ずかしくなってくる。美咲は美咲で、あくまで一般的な可愛らしい水着である。どうしてこうなった。
「悪い、目のやり場に困るよな。文句なら、あいつに言ってくれ」
目のやり場に困っている美緒には本当に申し訳ないが、まあ美緒のためにした行動の結果なので、なんとも言えない。諦めて楽しむとしよう。
「二人とも早くしてよ〜」
アタシたちが二人でああだこうだと言っていると、美咲がプールから顔を出して呼びかける。じゃあ、と美緒と顔を見合わせてプールに向かう。屋内なのもあって、アトラクションなどは少ししかないが、流れるプールなどそこそこ設備は充実している。そしてなにより時期が早いのもあってそこまで混雑していないのがいい。
「で、何する?」
三人でひとまずプールに浸かり、これからどうするか考える。レジャー施設のプールは冷たすぎず、快適な温度だから結構気持ちがいい。流れるプールでぼんやり流れるだけでもいいかもしれない。うん、それがいい。
「僕は、流れるプールがいいかな」
お、同じ意思を持つ仲間がいる。ちょっと嬉しい。
「流れに逆らって泳げばトレーニングになりそうだし」
「待て、逆行は禁止だし迷惑だからやめような」
根っからの体育会系だった。流石にそれはやめてほしい。
「じゃあ皆でのんびり流れながら話そっか。親睦会も兼ねて」
美咲が上手いこと場をまとめる。なんでこういう時にばかり気がきくのだろうか。まあいいか、三人でその意見に乗っかって流れるプールの方へと向かう。そして、だいぶ落ち着いてきたところで気付く。客の視線がだいぶアタシと美緒に集中していたことに。美咲め、あとで絶対怒る。
「なんだか、楽しいね」
アタシが決意を固めていると、美緒はそう言って笑いかける。その表情に、アタシまで表情を崩してしまう。
「そうだな」
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