13日目「アタシより頭はいいんだよな」

「あ、そこ間違ってるよ」

 美咲はアタシの間違いを指摘する。素の部分を見直すと、たしかに間違っていたので、答案を修正する。こう見えて美咲はアタシよりも頭がいい。しかも、全教科余さずである。文系理系問わずにアタシの上をいっている。非常に不服なのだが、毎回テストの結果を比べるたびに思い知らされるので仕方なく認めている。

「てか、自分の課題やれよ」

 問題は美咲が面倒くさがりだということである。いつも課題はアタシのやったものを写しては、間違いを訂正してから出すので、納得がいかないし本当にいい気はしないのだが、この際だから直してやろうとプールを人質、この場合物質とでも言った方がいいだろうか、とにかく課題を今日中に終わらせられなければ日曜日のプールはなしにすると脅してやったのである。その結果、美咲はアタシと一緒じゃないとできないと駄々をこねるので、アタシの家に招いてこの始末だ。結局できていないじゃないか。

「だってこれめんどくさいんだもん」

 美咲は嫌そうな顔をしては課題用のテキストをパラパラとめくって机に放ってしまう。まったく、どうしたものか。アタシより頭がいいのだから、実行にさえ移せればあとは早いはずなのだが、この調子だと本当にプールが無しになる。アタシは別にそれでもいいのだけど、問題は一緒に行くことになっている美緒だ。誘われたのが嬉しいのか、運動が好きなのか、あれから毎朝楽しみにしている旨のメッセージが送られてくるのである。悪気はないのだろうけど、流石にすこし鬱陶しい。実際に会えば好青年然としてすごくいい子なのだが、流石にあれだけ楽しみにしているのを無碍にはできまい。

「アタシが何したらやる気になってくれるんだ」

 この際仕方がない、自分の体を売ることにしよう。いや、流石に体を売るは言い過ぎだろうか。とはいえ、相手は美咲である。何を言われるかわかったものではない。体を売るくらいの気持ちで言った方が身のためかもしれない。

「え、ちょっと待って、終わらせてからじっくり考える」

 なんだか本末転倒になりそうな返事をして美咲は急に課題に取り組み始める。なんだか嫌な予感がするが、始めてくれたならあとは早いだろう。アタシも急がないと、美咲の方を見るとかなりペースが早い。この調子では途中で追い越されてしまいそうだ。

「よっし終わった。何してもらおうかな〜」

 結局、アタシの課題が終わらないうちに、美咲は追い越してしまった。そして美咲は意気揚々と考え始める。変な気を起こさなければいいが、アタシも早く終わらせなければ。

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