6日目「初めての休日」

 思えば、世界が狂ってから初めての休日を迎えた。あまりに疲労が溜まって外に出るのも億劫だ。いっそ一日中狸寝入りを決め込むのも悪くないけど、なんだか無駄な時間を過ごすような気分でもない。というより、本来の世界を外れた状況に身を置いているのが落ち着かないのである。

 しばらく何をするかぼーっと考えた結果、ネットサーフィンで間違い探しをするという答えに落ち着いた。元の世界との違いを探す間違い探し。これほど見つけた間違いに憂鬱になる間違い探しもあるまい。それでも、自分の置かれている現状を整理するには、まあ悪くないだろう。

 男、という言葉が消え、漢字も失せ、英語などの他国語も消えていたので、ひとまずひらがなでおとこと検索をかけてみる。これで「お」と「こ」の関係みたいな話がトップに上がってきたら傑作だ。そんな悪ふざけも兼ねていたが、そこに出てきたのは、予想外の情報だった。

『各地で「おとこ」という人間の別個体の存在を主張する人が相次いでいる』

 ネットニュースとして挙げられているそれは、まさしくアタシの状況と一緒だった。私だけじゃない、それなりの人数、世界の異変に気づいている人がいる。その事実に、アタシは僅かな希望を見出した。アタシの学校にもそのタイプの人がいると良いのだが、調べるのもなかなか骨が折れそうだ。どうにかして見つけ出せないだろうか。というか、アタシがあれだけ騒がれているのだから、何かしらの可能性を感じてアプローチしてきても良いものを。そう考えると、もしかしたらアタシの学校にはアタシしかいないのかもしれない。まあ、そんなにいっぱいいたらこの世界はおかしいという話がもっと信憑性を持って話されていおるだろうし、そういう事だろう。

 間違い探しは早速中止だ。行き当たりばったりがすぎるが、別にアタシが休日をどう過ごそうがアタシの勝手だし、別に誰かとの約束でもない。そんなことより有益な情報を集められる方が大事である。ということで、Twitterで同じような境遇の子が近くにいないか検索をかけてみる。『おとこのいる世界』とでも検索かければ見つかるだろうか。

「いた。ウチの高校に一人と、あとは近くの女子校か」

 今となっては全部女子校だけど、女子校は今でも女子校の名を冠している。なぜなのかと調べてみると、何やら女子としての品格とやらが関わっているらしい。こじつけが過ぎる気がするが……。ひとまずDMで連絡だけ取ってみる。近いうちに会えると良いが……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る