第5話 戦闘開始

古びた家々が並び、楽しそうに微笑む人々、その笑顔の裏にはどこか不安そうな情景が垣間見えてくる。時間的にはもう時期昼時くらいだろうか。

 まあ、いかにもって感じだな。と俺が感慨に浸っているのをよそに、最後まで『苺フラペチーノ』を堪能したプロテアが口を開いた。


「ついたわ。ここがカルミア村よ」


「そうか、思ったより広そうな場所だな」


「そうね。というか、こんな場所でレベル上げなんてしたら丸で迷惑だわ。幸い、気付かれていないみたいだし早いところ移動しましょ」


 気付かれてないうちに・・・・・・なにかやましい事があるようにしか聞こえない言い回しだが、村にとっちゃ俺たちは異物だ。たとえ勇者だとしても。


 しかし、移動するなら最初からそこにゲートを開いてくれよ。なんて思ったが正確な地名が名義されている場所出ないとダメなんだろう、まさにカルミア村の近くにある森にワープなんてことは出来ないんだろう。その森に『カルミア森』なんて名前が付けられてなければな。そんな事を考えながら俺はプロテアに続けて


「あぁ、そうだな」

ぽつりと返事をした。



 辺りを見回す。


「平原だな」


 思っていたよりも戦いやすそうな場所だった。しかし、言うとするならゴツゴツした岩が所々に隠れている。


「ここなら全力出しても大丈夫ね(所詮不本意勇者、期待なんて微塵もしてないけど・・・・)」


「不本意ながらも聞こえてるぞ」


 すると、どこかの茂みからか何やら怪しげな音がし始めやがった。くっ、まさかこんなにも早く始まっちまうのか、、俺はグッと息を飲む。次の瞬間「あっ!」驚いなような口調でプロテアが指をさした。


「あそこ! チャンスよ!」


 プロテアが指さす場所に目をやると、そこには何の変哲もないスライムがポヨンポヨンと跳ねていた。しかし、実際に見てみると意外と可愛いな。だが幸い一匹といったところか。いくら俺のステータスがオール一だってスライムの一匹や二匹位倒せるに違いない。


 ポキポキを指を鳴らし、ニヤリと笑ってスライムに向かって走り出した。


「おらぁ! お前なんてこれで十分だ!」


「(なあんだ! 不本意勇者もいざとなったらやってくれるじゃない!)」


 そう、俺がここに来るまでなにもしていなかった訳では無い。俺はモンスターが現れたら使う必殺技というものをずっと考えていた。


 そして、皮肉にも一番安いコーヒーを飲んでいる時に思い付いたんだ。・・・・・・その名も


「破滅悪夢(カタストロフィメイトメア)」


と同時に俺は拳をスライムに向かって振りかざした。


「・・・・・・こじらせてるわね」


「うりゃあ!」


 物凄い爆音と共に、ぶわっと砂埃が辺り一面を渦巻いた。一応手応えはアリだ。俺はパッパと手を叩き砂を掘ろった。これが現段階最大限の攻撃だ、さすがに殺せただろう。俺は颯爽とプロテアの方へ振り返り歩き出した。


 が、プロテアは喜んでいないようだった。


「何スカしてんのよ!! 倒せてないじゃない!!!!」


 何を言っているんだプロテアさん。倒せてないわけないだろう? と思いつつも俺は後ろを振り返った。


「ふっ・・・・やれやれ、レベルMAXとあたっちまったか」


「・・・・・・スライムにレベルなんてないわ・・・・・・」


 プロテアの顔はもうすっかり青ざめていた。そして悲劇はこれだけに収まらなかった。

 俺が渋々スライムに二発目の破滅悪夢(カタストロフィナイトメア)を食らわせに行こうとした所もう一方の茂みからもガサゴソと音がし始めた。


「・・・・・・お、親分!」


 なんだなんだ俺の破滅悪夢を食らってもまだ喋るかこのスライム・・・・・・ん? 喋る? ッ! スライムが喋った?! 俺はあまりの出来事に唖然としてしまった。


「喋るスライムも居るのね、初耳だわっ」


 更に驚くことに、この王国の女神でさえ知らなかった様だ、

ッ大丈夫なのか、こんな女神で・・・・・・。


「騒がしい。私は寝ていたんだ」


 こっちも喋ったぞ。それに、親分、? スライムに上下関係なと存在するのか。俺は恐れながらも質問をする。


「親分、といったか?」


「どうだ! 流石の勇者さんも俺たちの親分に恐れ戦いたか!」


「まず、俺はスライムに位が設けられている事に驚きだ」


すると親分がぴょこんとひとつ跳ねて話し始めた。


「何を言っている。永年スライムは縦社会だ」


らしい。俺は到底理解出来ないがな。するとプロテアが何か閃いたような顔をして話に割り込んできた。


「まっ! コイツら全員ぶっ飛ばせばレベルもそこそこあがるんじゃないかしら」


「馬鹿言うなプロテア、俺は下級スライムですら倒せなかったんだ。親分を相手にするなんてたまったもんじゃない」


「親分コイツらどうしますか?」


「言うまでもない。目障りだ。殺る」


と同時に親分スライムの体からモワモワと紫色の蒸気が出始めた。


「ギアセカン・・・・・・」


───それ以上は言わなくとも分かる。こりゃ丸パクリだ。


「ちょ、ちょっと! まずいじゃない! どうするのよ!」


 咄嗟にプロテアが割り込んできた。が、どうにもこうにも俺の辿る運命などみえているだろう。死だ。しかし、プロテアはなにか思い出した様だ。


「・・・・・・あっ! そうだわ! 秘策があるわっ! スキルよ、スキル!」


「スキル、? あっ」


『スキルに関しては後の戦闘で発言するものと考えてください』


 俺はかつてのアスターちゃんの台詞を思い出した。そうだスキルだ。スキルがあるじゃないか。ステータスがオール一な分とんでもスキルが発言するに違いない。唆るぜこれは。


「小賢しい! 暗黒落雷(ダークネスライトニング)!」


 空高く親分が飛び上がった。そしてあっという間に米粒ほどの大きさになった、その直後、ものすごいスピードで落ちてきた。なんだこれ。


「凄いぞ! 親分の必殺技が生で拝めるなんて!」


「これが必殺か、どことなくダサいな」


「白石、あんたも大概よ」


 まずい、こんな事考えているうちにスライムは物凄いスピードつけてるしゃねえか! 発言しろ、俺がのスキル、俺のとんでもスキル! その距離二十メートル程。


「残念だったな。私の必殺を生で拝めただけ感謝しろ」


 おい、本当にに発現するんだろうな。俺とスライムの距離は今や物差し一つ分だぞ。


「白石っ!」


「いけいけ! 親分!」


「俺のスキル!! 早く来てくれえ!!」


「じゃあな。勇者」


白石 湊人

『ユニークスキル ロリ化 発動』


 そこには、美少女が立っていた。スライム色で薄緑の艶がかった髪の毛。長さは肩のほんの少し上のボブ。目は青緑だろうか。きょとんのした表情をしている。その可愛さと言えばアスターと肩を並べる程、いやそれ以上だった。

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史上最強の LV.1 勇者ロリコン〜不本意で召喚された勇者、無能野郎だと蔑まれているがロリコン特有のユニークスキルで天下無双〜 さとう としお @Toshioentity

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