第11話 ダレモイナイ 番外編 その3

ピンッ、、ポ~ン……


珍しく早く帰宅し、夕飯もお風呂も全て終わりのんびりとリビングで寛いでいたとき、間の抜けたドアチャイムがなった。


「ママ、玄関に男の人」

モニターを覗いたリクが告げる。

「は?」


飲みかけたノンアルビールをテーブルにトンっと置く。

「誰さ?」

モソモソとモニターを覗きに行く。


「は?」

覗いた途端にすっとんきょうな声をあげてしまう。なんで?どうして?と言いながら『開く』のボタンを押す。


「リク、パパさんが帰ってきたんだよ」

サエコはしぼりだすようにリクに告げた。


1時間後。


「……でさ、部長にね。珍しい天体ショーを家族でみたいって言ってみたらさ……」

カズヒコと微妙な空気だったリクだったがすっかり打ち解け、膝の上で寝息を立ててしまっていた。


サエコにツンツンとつつかれてはじめてリクが眠ってるのに気づいた。

「あんなに小さかったのにね」

ムニムニとほっぺをつつく。

「もっと抱っこしたかったなぁ」

はあ、と深いため息をつくカズヒコを見てサエコは少し寂しげに笑う。

「もう、小学校だよ」

「入学式済ませて帰ってこい、ってさ」

「えっ、半年以上あるよ。マジ?くび?」

「違う違う。一区切りついたから今まで使わずにいた休暇をまとめてくれただけ。給料も大丈夫だよ」


リクを膝に抱いたまま、カズヒコはサエコとノンアルビールをあける。

「かわいいね」

「誰の子だと思ってる?」

「俺の子だからかわいいの」

他愛もない会話を重ねる。

今まで、叶うことなかった家族水入らずの貴重な時間が増えていく。

この時間が永遠に続いて欲しいと願う、サエコとカズヒコだった。

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