第10話 ダレモイナイ 番外編 その2
「パパさん、気付いたかなあ?」
「多分、気付いてないとおもうよ。今度電話で教えてあげたら?」
ムラオカカズヒコが凶星を2度目にみることとなる数時間前。
遠く離れた九州のある街で娘と妻はテレビをみながらカズヒコのことを考えていた。
5年を過ぎもうすぐ6年になろうとしている単身赴任。医師という仕事でなければついて行ってただろうか?おかげで娘は父というものを理解できずに成長してしまった。
「たまには帰ってくればいいのにね」
とサエコは呟く。娘は聞いていなかったか
「今度ね、ランドセル見せるの。ビックリするかな……」
とまるで近所のおじさんに見せるかのようにいう。
入学準備は全て整ってんだけどな!
サエコは心の中で毒づく。
「リク、今度パパの所へ行こうか?」
サエコは娘に提案してみる。案の定の答えが返ってきた。
「無理しなくていいよ。ママ忙しいんだから」
極上の笑顔を返され、ウッと唸ってしまう。そう、パパの所へ行こうと約束して何度反古にしたか。パパも帰ると何度約束したか……。だが今回こそ、会わなければお互いに永遠の後悔をしそうな予感がする。
「オッシャ!サエコはここに宣言いたしますっ。来週最低でも3日休みを取り夫をおどかしに行きます」
「……ママ、どうしたの?」
娘のキョトンとした顔にVサインをするサエコ。
「さて、楽しみだね」
1人鼻唄を歌いながらキッチンへと消えるサエコ。どうせ約束は破られるだろうと期待をしていない娘のリク。
ママがキッチンに消えてしまうまで目で追って、ハッと我に返る。
「本当になったら大変だあ」
慌てて自分の部屋へ駆け込むリクだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます