第7話 ダレモイナイ 第7夜

政府の公式発表ではこの感染症は感染症の中でも伝播力が極めて弱いものであると公表していた。飛沫やエアロゾル、接触は言うまでもなく、空気感染もしない。


ただし。ある特定の虫が血管内に排出した卵が発症の原因であると。


「その頃は皆、家に引きこもり防虫対策をしていたの」


外出などせず家の中で防虫対策をしていれば大丈夫。皆、そう思っていた。

ごく僅かな違和感を感じながら、人々は家に引きこもっていた。虫が原因でなくても人と接触しなければ感染はしないだろう。


だが。いつ終息するのか。終わりの見えないゴールにイラつきがみえ始める。


「政府はちょうど試験運用が始まったばかりのVRをゲームばかりではなく生活の方に広げられないかと打診してきた」


少し投げやり気味に笑いながら言う。


感染症対策は全て後手。予防も全て国民側へ丸投げ。経済的損失を被った企業、個人への救済、保証もやる気をみせず。


「遠い遥か彼方のところからやってきたお客様が引き起こした災害だから関係ない」


そう思ってたんでしょうね、


少し自嘲ぎみに笑いながら言った。


話があまりに大きすぎてついてゆけない。

本当にこちらが現実なのか?

夢の中なんだろう?

誰か、誰か本当のことを教えてくれ!


「ちょうどVRゲームが出始めたころ。

VRで仮想の生活をする人も出始めていていっそ国民を全部VRの世界に避難させてはどうかと提案した人がいた」


サエコ、ここでニッコリ笑う。


施設で体調など管理しつつ国民を全てVRの世界で生活させてはどうかと提案があがった。政府の打診もあり研究は大幅に加速度的に進められた。


人の脳波を直接VR装着に接続する。

オンラインゲームではやられていた手法。

まだテスト段階であり24時間接続したままという例はなく身体、特に脳へのダメージが懸念されていた。他にも課題が山積みに膨れ上がる。


しかし全て数ヵ月でクリアした人がいた。


サエコは俺を指差す。


「自分ですか?」

身に覚えがない。記憶がないんだ。

何もかも全てができすぎた台本のよう。

夢の中、ドラマのようで信じられない。


「今、色々な問題が起き始めました。

我々の理解を超えています。先生が始めた計画です。我々はサポートを続けましたが先生のようにはいきませんでした」


ユウタの例が各地で起き始めていると。

対策を講じるべきなのは理解できるが。


俺、なのか、本当に………。


そして、唐突に世界が変わった。




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