第6話 ダレモイナイ 第6夜
「聞きたいことの1つに何故、いつまでも夜が明けないか?ですよね」
俺は大きく頷いた。こっちが現実と言われても、これでは納得できない。
サエコは少し、ショックを受けるかもしれませんが落ち着いて聞いて下さいね、と前置きをしてから話しだした。
……
今から4年前のこと。火星の軌道上に突如小さな隕石が現れた。それは不規則な動きをしながらも確実に地球へと接近していた。
あらゆる機関、あらゆる人々がどう計算しても結果は同じ。数ヶ月、遅くても1年以内に衝突する。サイズは小さいながらかなりの質量が判明し、衝突時の被害は尋常ではないことが分かる。下手をすればアメリカサイズの国が地球上から消えてしまうこととなる。
「結果を言えばね、衝突地点は日本。被害も日だけで済む」
この計算結果に各国の首脳陣は胸をなでおろした。多少被害を被る可能性のある、韓国などはある程度の覚悟をしたのだろうか。
そして、運命の日。隕石はまるで狙っていたかのように東京に衝突した。
西は愛知県から石川県あたり、東は茨城県から新潟県辺りが一瞬にして消滅してしまった。
舞い上がった噴煙は成層圏を覆い、地球上をいつまでも明けぬ夜の世界へと変えた。
「今でも詳細な被害は分かってないわ」
死亡・行方不明者数は言うまでもなく、被害地域、経済的損失は計測すら不可能だった。
直接被害のなかった国、地域も日照がなくなったための目に見えない被害が起こり始めていた。
作物が育たない、それにつれての害虫害獣の大量発生。少なくなった食料の奪いあい。
偶発的な出来事がいつ、火を吹くかそんな状態が続く。
「そんなときにあることが起き始めたの」
最初は隕石落下地点周辺で。
最初は小さな皮膚症状から。毛穴から出血したような小さな湿疹。痒みも痛みもなくただ転々と湿疹だけ。気にしなければなんともない。そんな感じの湿疹。その症状が日本中に広がった後、次の症状が現れた。
湿疹が全身へと広がった者に軽い呼吸器症状がみられるようになった。軽い咳、或いは息苦しさ。そこまで酷いものではない、あくまで軽い症状。
そこまで進んでしまった頃、ようやく政府が調査に重い腰をあげたがすでに手遅れだった。悪魔は最後の仕上げを始める。
呼吸器症状が現れて1週間ほどすると眠ったまま目覚めない者が現れ始めた。そのまま静かに死を迎えていく。
ここにきて、パニックの波が世界を覆う。
甘くみていた感染症が死を呼ぶ感染症だったのだ。パニックにならないほうがおかしい。
薄くつながっていた各国の関係が完全に切れてしまった。感染症を防ぐには引き込むのが一番だから。
「さて、それからどうなったと思う?」
サエコはニッコリ笑う。
街中に人がいなくなってしまった理由はわかった。わかったが?
「ここからが本番。ちゃんと聞いてね」
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