第4話 ダレモイナイ 第4夜

会社の誰もがユウタのことを知らなかった。ユウタのいた痕跡すらもなかった。


ユウタが使っていた机は埃が積もり長い間誰も使っていないことを証明していた。

ロッカーも、シンイチ、ユウタ、リョウの順だったものがシンイチ、リョウに変わっていた。

ユウタがふざけて置いていた置物、お気に入りのコップ……。

全て、最初から存在してなかったかのように消えていた。


そろりとスマホをだす。俺のアルバムには残っているハズだ。


コウダイと肩を組んで笑っているユウタ。

仕事中のいきなりのシャッターに変顔のユウタ。

プレゼン後の打上げの集合写真。

他にも数枚……。


だがユウタではなく知らない男がそこにいた。ほっそりとした今風のどちらかと言えばチャラい感じのユウタ、ではなく黒々と日焼けしたゴリマッチョ風の男がユウタのいた場所に写っていた。


俺の頭がおかしくなっているのか?


ユウタがいるはずのその場所に。

全部知らない男が。

全てユウタではない、別の男がいた。


「まだ、言ってるの?カザハラユウタ?だっけ。そんな子はいないよ。話でしょ。うん、落ち着いて。えっ、この子?トオヤマカズシ。えぇ?知らないの?本当に大丈夫?」


先月から長期出張中だからいないよぉと手を振りながらサエコはいなくなった。


「先輩、どうしたらいいんでしょう?俺。」

夢の中でユウタほ言っていた。

泣きながら戻れない、と何度も。


んです。眠ったかと思っても一瞬だけ。数秒後には目が覚めてこの世界にいるという。


ユウタはコウダイのことを気にしていた。

借りたままのゲームソフト、一緒に行く予定だったイベント……。

付き合っていた女性もいたと。今度先輩に紹介しようと思っていたんです、と。


1日が終わりベッドに入り目を閉じると数分後にはあの世界にいる。あちらが夢の中ではないのか?


あちらの世界では唐突にこちらに引き戻され再び同じ1日がスタートする。


いつまでも夜が続くあの世界が夢の中ではないのか?こちらが夢の中なのか?

もう、何が何なのか、わからない。


混乱した頭のまま、ベッドに入る。


……


夜が続く世界に戻ってきた。


ここではユウタ以外の生きたものにまだ出会っていない。


ユウタは海の方から歩いてきたと言っていた。海の方から山を越えてきた、と。


「あそこに行くの?」と凄く不安げに聞いていた。指差す場所は有名大学や病院があるエリアだ。あそこで何かがあるのだろうか?


どちらが夢か現実かは別として、どちらにも同じ場所に同じ建物が建っていた。寸分の狂いもなく同じ場所に同じ大きさで。

違うのは人がいるか、いないかだけ。

それだけの違いだ。


もしかしたらユウタは病院から来たのかもしれない。何らかの原因があるハズだ。

せっかくユウタがくれたヒントだ。無駄にする手はない。もしかしたら誰かいるかもしれない。


不安だが確認だけはしておこう。


そこで目が覚めた。

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